研究課題
挑戦的萌芽研究
D-セリンの放出機構およびシナプス内外のNMDA受容体活性調節機構の解明を究極の目的として、以下のような研究を進めた。NMDA受容体は、同じイオン透過型であるAMPA受容体とは異なり、1価の陽イオンだけでなく、2価のカルシウムイオンも透過するという特性を有している。シナプスが高頻度で活性化すると、細胞内のカルシウムイオン濃度が大きく上昇し、種々のカルシウム依存性の生化学過程を調節する。その代表的な例として、シナプス伝達の長期増強が挙げられる。また、個体レベルでは、記憶・学習のような高次機能だけでなく、種々の精神神経疾患にNMDA受容体が関与していることも明らかになりつつある。その中でも、グルタミン酸と同時にNMDA受容体に対してコアゴニストとして作用するD-セリンが、統合失調症や不安障害に関与する可能性が示唆されている。本研究計画では、正常マウスやD-セリンの制御に関与する分子の遺伝子改変マウスを用いて、分子レベル、細胞・ネットワークレベル、さらには、個体レベルでD-セリンの生理機能を明らかにすることを目指し、以下のような成果を得た。海馬スライス標本のCA1領域において、錐体細胞よりホールセル記録を行い、NMDA受容体に対するD-セリンの効果を電気生理学的に検討したところ、シナプス内外でNMDA受容体に対する効果が異なることを確認した。また、関連分子の脳部位特異的遺伝子改変マウスの作製の準備を開始し、平成26年度中に生理学的解析と行動学的解析を開始する予定である。さらに、これらを用いて、D-セリンの放出機構などを明らかにすることも試みる。
2: おおむね順調に進展している
初年度に予定していた電気生理学的解析では、十分なデータを得ることができた。また、遺伝子改変マウスの作製・解析もかなり進展した。平成26年度に予定していた実験項目もある程度進めることができ、全体としては、おおむね順調に進展していると判断する。
これまでの電気生理学的解析をさらに継続するとともに、脳部位特異的遺伝子改変マウスの解析を進め、全体としての目標達成を目指す。
研究が当初計画より効率よく進んだため、一部の研究費を次年度の研究計画に使用することとした。シナプス機能解析と行動解析をさらに充実させるために使用する。
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Journal of Neuroscience
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/NeuronalNetwork/Neuronal_Network/Index.html