研究課題
挑戦的萌芽研究
本年度はすでにクローニングの終了した14個のファミリーメンバーすべてを発現ベクターに組み込み発現チェックを行った。さらに、SAD-AおよびSAD-B以外のファミリーに関してリン酸化機能を阻害するような変異体の構築を行った。いくつかのメンバーをラット海馬初代培養細胞にトランスフェクションして、それらの影響を解析したものの、死細胞が増える傾向にあり、トランスフェクションの条件をより詳細に検討する必要が出てきた。AMPKファミリーに属する遺伝子の多くは、神経細胞の極性形成に関与することが知られており、AMPKファミリー遺伝子群を過剰発現することで、神経細胞の発達・成長を阻害していることが示唆された。また、抗体に関してはコマーシャルベースものがあまりよいものがなく、自前で作成するためにGST融合タンパク質を用いた精製系を立ち上げた。今後、各抗体の取得のために、抗原精製、動物への免疫、特異抗体の取得後に、免疫染色・ウェスタンブロット等にて特異性の確認を行う。さらに、CASTリン酸化の軸索形成への影響を解析する目的で、当初は、ラット海馬初代培養細胞を想定していたが、CASTのリン酸化部位に変異を導入したノックインマウス(セリン残基をアラニン残基に置換したもの)の作製が進みキメラマウスまで終了した。今後、ヘテロマウスの作出を行うと同時に、得られた個体から海馬初代培養細胞を調整して、軸索形成への影響を検討する。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子クローニングは順調に進んだが、抗体作製に関して免疫染色に使用可能なものが得られず、自前で作製する必要が出てきたため進捗状況にやや遅れが見られた。さらに、活性化したAMPKを認識する抗体(自己リン酸化部位の抗リン酸化抗体:抗 P-AMPK抗体)を用いてその特異性を調べたところ、この抗体はAMPKのリン酸化部位特異的ではなく、他のAMPKファミリーメンバーも認識することが明らかとなった。このような、既存の抗体の性状解析に時間を取られたこともあり、抗体の作製と特異性のチェックに関してやや遅れが出たと思われる。一方で、上述のごとく、当初はラット海馬初代培養神経細胞にて形態学的な解析を進める予定であったが、遺伝子改変マウスの作製が予定よりも順調に進展し、研究全体としては当初の目的に沿った形で進展していると思われる。特に、リン酸化部位に変異を導入した遺伝子改変マウスを用いることで、細胞レベルだけでなく個体レベルでもより多くの情報が得られることが期待できる。
AMPKファミリーメンバーに特異的な抗体作製を引き続き進める。これまで、AMPKファミリーに関して多くの解析例・論文が出ているものの、特異性の低い抗体を用いて得られたデータもあり、メンバーごとに特異性の高い抗体の作出が必要不可欠である。特に、活性化の指標となる自己リン酸化部位を認識する抗体に関しては、認識部位がメンバー間で相同性が高いためにこれまでのデータの解釈については注意が必要である。リン酸化部位に変異を導入した遺伝子改変マウスの作出を早急に進める必要があるので、動物施設の飼育スペースを拡大させ、交配・繁殖のスピードアップに努める。さらに、形態学的な解析に加え、次年度後半は、電気生理学的解析を行う予定であり、野生型のマウスを用いて神経伝達物質放出に関わる基礎データの取得を前半に進めておく。
端数が残りましたが、継続なので26年度使用します。26年度研究実施計画に合わせて使用します。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.med.yamanashi.ac.jp/basic/bioche01/