我々は、発生段階依存的な神経幹細胞の分化様式について、特にエピジェネティック制御の観点から、分子メカニズムを解明することを目的としている。JmjCファミリー遺伝子群に分類されるヒストン脱メチル化酵素は、メチル化反応の際に酸素分子を基質として用いるため、酵素活性が細胞内酸素濃度によって制御される。一方、研究代表者らのグループは神経幹細胞の低酸素での培養および分化が、浅層ニューロンとアストロサイトの産生効率を上昇させることを見出している。 ES細胞を用いたニューロン分化では通常培養、低酸素培養ともに分化5日後から、ヒストンH3K27に特異的な脱メチル化酵素であるJmjd3の発現が上昇すること、見出した。また、胎生14.5日齢のマウス終脳より単離した神経幹細胞分化においてJmjd3の発現を減弱したところ、GFAP陽性のアストロサイトへと分化する細胞が減少することが明らかとなった。しかしながら、胎生11.5日齢の神経幹細胞におけるJmjd3のノックダウンでは産生するニューロンのサブタイプに影響を与えないことがわかった。すなわち、Jmjd3はアストロサイト分化を促進する反面、浅層ニューロン分化には関与しない可能性が示唆された。
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