研究課題/領域番号 |
25640015
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
水野 秀信 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教 (00567159)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二光子顕微鏡 / マウス / 体性感覚野 / 電気選考法 / マウス遺伝学 / タイムラプスイメージング / バレル / 樹状突起 |
研究概要 |
本研究の目的は『新生仔大脳皮質神経回路の形成過程をin vivoタイムラプスイメージングする手法を開発し、その分子細胞メカニズムを明らかにする』ことである。 本研究では、バレル構造をもつマウスの体性感覚野の特徴を利用し、その一端を解明した。バレルはマウスやラットの体性感覚野第4層にみられる組織学的構造であり、個々のバレルは一本ごとのヒゲ感覚を処理する。ヒゲからの入力を伝達する視床皮質軸索の終末は、バレルの内側にクラスターを形成する。また、第4層バレル細胞はバレルの縁に配置し、樹状突起をバレルの内側に広げて視床皮質軸索とシナプスを形成する。 新生仔期においてバレル細胞樹状突起の二光子顕微鏡タイムラプスイメージングを行ったところ、樹状突起は伸縮しながらバレルの内側に枝を広げていた。一方、NMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)を欠損したバレル細胞では、樹状突起の伸縮が増加し、正しい接合の相手の存在しないバレルの外側にも枝を広げていた。 本研究により、哺乳類の新生仔における視床皮質回路再編がはじめて直接観察された。さらに、NMDA受容体は樹状突起の伸縮を制御することにより、正確な視床皮質回路の形成に貢献することを示した。以上の結果はNeuron誌に掲載された(Mizuno et al., Neuron 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書では、具体的な研究目標として、①「幼仔期二光子in vivoタイムラプスイメージング法の開発」、②「バレル細胞樹状突起形成におけるNMDA受容体の役割の解明」、③「バレル細胞のバレル辺縁への配置におけるNMDA 受容体の役割の解明」の3つを挙げた。 平成25年度は、①と②を一定の水準まで達成し、論文発表することができた。また③については、①と②に関わる論文発表と並行したが、データ集積の準備をほぼ終えることができた。以上のように、研究は着実かつ迅速に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、研究目標③「バレル細胞のバレル辺縁への配置におけるNMDA 受容体の役割の解明」の達成を目指す。 現在、バレル辺縁への配置過程の観察に必要なイメージング法の改良をほぼ終えている。本年度は、正常なバレル細胞におけるバレル辺縁の配置過程を調べると共に、NMDA受容体欠損バレル細胞においてバレル辺縁の配置に異常があるか否か、また細胞体がどのような挙動を示すかを調べたい。 中長期的には、幼仔期にスパインが急激に増加する様子を観察するなどの微細形態のイメージングや,神経活動のイメージングなどにも挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は予定以上の研究進展があり、研究成果を論文発表することに専念した。そのため予定より実験量が減り、その結果物品費(試薬やマウス等の購入費)が減少した。 平成26年度はより精力的に実験を行うので問題なく使用できる。
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