本研究の目的は『新生仔大脳皮質における神経回路形成過程をin vivoタイムラプスイメージングする手法を開発し、その分子細胞メカニズムを明らかにする』ことである。 本研究では、バレル構造をもつマウスの体性感覚野の特徴を利用し,その解明をめざした。バレルはげっ歯類の体性感覚野第4層にみられる組織学的構造であり,個々のバレルは一本ごとのヒゲ感覚を処理する。ヒゲからの入力を伝達する視床皮質軸索の終末は,バレルの内側にクラスターを形成する。第4層のバレル細胞はバレルの縁に配置し,樹状突起をバレルの内側に広げて視床皮質軸索とシナプスを形成する。 申請書では、研究①バレル細胞樹状突起形成におけるNMDA受容体の役割の解析、および、研究②バレル細胞のバレル辺縁への配置におけるNMDA 受容体の役割の解析、を提案した。 昨年度は研究①を達成した。新生仔期(生後5日齢)におけるバレル細胞樹状突起の2光子タイムラプスイメージングを行った。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体が樹状突起の伸縮を制御することで、樹状突起のバレル内側への伸長に貢献することを示した。 今年度は研究②を推進した。生後4日齢からの9時間のタイムラプスイメージングを行ったところ、野生型マウスにおいてもバレル細胞の移動は検出されなかった。以上の結果は、バレル細胞の移動は生後4日齢以前にほぼ完了することを示唆している。生後4日齢以前のイメージングは技術的な困難が伴うが、今後技術を洗練し生後4日齢以前に細胞移動が起こるか否かを明らかにしたい。
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