これまでの研究に於いて霊長類(マカカ)の大脳皮質領野特異的に発現する遺伝子の網羅的解析を行い、連合野特異的発現遺伝子と視覚野特異的発現遺伝子の2群に分かれることを報告してきたが、本研究では、これら2群のプロモーターのCpG領域のメチル化レベルを調べ、連合野特異的発現遺伝子では高く、一方視覚野特異的発現遺伝子では低いことを示した。メチル化レベルを組織レベルでの領野差へと転換する機構としてメチル化結合蛋白が関与する可能性を検討し、メチル化結合蛋白(MBP)ファミリーの分布を調べた。その結果、MBD4が顕著な領野差(連合野に高い)を示すことが分かった。ヒト線維芽培養細胞と生体サルに於けるAAVベクター法によるGOF(gain of function)とLOF(loss of function)法を行い、MBP4が連合野特異的発現遺伝子(PNMA5とRBP4)の発現を制御していることを示した。 当該年度は、これらの研究結果を踏まえて、更に視覚野に於ける非メチル化領域に結合して、活動依存的にその発現を制御する転写因子とその機能を制御する系の確立を目指す系を立ち上げた。 その為、我々は、TTX注入後、暗闇に24-48時間飼育することによって、最初期遺伝子(IEG)の発現をバックグラウンドまでに落とした後、短時間の光照射により一次視覚野で誘導されるIEGの発現を観察刷る系を用いて、マーモセットの眼優位性カラムの証明とそれを用いた、光照射にともなう発現遺伝子パターンの詳細な解析を一次視覚野の層・細胞種で比較検討し、マーモセット一次視覚野における光誘導に伴う転写因子制御の実体を明らかにした。更に、これらの発現を制御出来る制御系をウイルスベクターにより立ち上げた。 今後、これらの制御系をもとに、光誘導と神経細胞の軸索、樹状突起、スパインの形態変化と機能的変化を解明したいと考えている。
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