アストロサイトはG蛋白質共役型受容体を介して神経伝達物質や神経調節因子に応答し、細胞内カルシウムを上昇させる。アストロサイトの脳学習における役割を直接的に検証するために、光感受性のG蛋白質共役型受容体(OptoXR; Airan et al. 2009)をアストロサイト特異的に発現するトランスジェニックマウスを複数系統樹立した。今年度は、光活性化の周辺細胞への影響、および、運動学習への効果を調べた。 約半数のアストロサイトでOptoXRを発現する系統で、生体内アストロサイトのカルシウムイメージングを行った。LED光を1秒間照射すると10秒以内にOptoXR陽性のアストロサイト内でカルシウムシグナルが上昇したが、OptoXR陰性細胞内でカルシウム上昇を検出できなかった。また、刺激の条件によっては、OptoXR陽性アストロサイト内のカルシウム上昇に続いて周囲のOptoXR陰性アストロサイト内にもカルシウム上昇が生じる現象を見出した。このアストロサイト間のカルシウム上昇の伝搬はTTXで神経活動を阻害しても認められた。 次に、アストロサイトの活性化が神経活動に及ぼす影響を評価する為に、麻酔下のOptoXRトランスジェニックマウスの大脳皮質から局所電場電位記録を行った。LED照射後の局所電場電位には微弱な(数μV)応答しか検出できなかったが、生体内ニューロンのカルシウムイメージングを行ったところ、一部のニューロン内でカルシウムが上昇する結果が得られた。現在、光活性化したアストロサイトが周囲のアストロサイトやニューロンの活動を制御するメカニズムを調べている。 LEDを装着したOptoXRトランスジェニックマウスにローターロッド訓練を行った。ロッド加速直後にLED照射したが、ロッドから落下する時間に変化は認められない。現在、照射時間あるいは照射のタイミングを変えた実験を行っている。
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