研究実績の概要 |
本研究では、中枢ニューロンよりマイクロRNA(miR)が放出され、ニューロン間を伝搬する可能性を検証した。生後1-2日齢のラット脳より大脳皮質の初代培養ニューロンを作成し、血清培養を行った。その後、外来エクソソームの混入を除外するために、無血清培地(B27サプリメント)による培養維持を行った。その後、培地中に放出されたエクソソームを回収し、それに含有されるmiRの検出を試みた。BDNF(脳由来神経栄養因子)は、中枢ニューロンにおける神経伝達に重要な神経栄養因子であるが、このBDNF刺激によるエクソソーム分泌促進の可能性も検討した。ナノ粒子解析装置を用いたカウントにより、培養大脳皮質ニューロンから放出されるエクソソーム数への影響の解析を行った結果、BDNF添加による顕著な変化は観察されなかった。単離したエクソソームでは、miR-1, 9, 16, 124a, 134など、精神疾患などとの関連が報告されているmiRの有無を検討した。コントロールでは、これらのmiRの含有量は検出限界以下ではあったが、BDNF刺激後では、特異的なmiRが検出された(未発表)。これは、BDNFによるエクソソームの分泌効率や、エクソソームへのmiRの封入過程、または細胞内におけるmiRの産生増加などの可能性が考えられ、現在、検討中である。また、アストロサイトなどのグリア細胞でのmiRの動態はほとんど明らかではないが、我々は線維芽細胞増殖因子によるmiR-134の産生増加と、その機能におけるERKシグナルの重要性などに関する論文報告を行った(Numakawa et al., Biochem Biophys Res Commun. 2015,456:465-70.)。
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