研究課題/領域番号 |
25640027
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
|
研究分担者 |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 神経病理学 / てんかん / 脳神経疾患 / 皮質異形成 / 体細胞変異 |
研究概要 |
難治てんかん患者:特に乳幼児や小児の脳から採取された外科手術標本を対象に、病理組織学的診断を進めた。特に限局性皮質異形成や片側巨脳症を対象に、臨床病理学的スペクトラムを解析すると共に、分子生物学的研究を進めるための標本処理を進めた。高度の異形成を示す症例は両者の中間に位置し、その病態形成機序にAKT3情報伝達蛋白合成系における体細胞変異が関与していると仮説を立て、その実証に向けた取り組みを行った。 ①当該症例の病理組織学的診断と材料の蓄積:本研究課題では、てんかん原性としての皮質異形成病巣にdysmorphic neuronの出現を伴う稀な症例を対象としている。その病理組織学的診断には、てんかん外科病理学に関する専門的な経験知を必要とする。皮質異形成症例は約20例、片側巨脳症に類似する高度の病巣を呈する症例は11例を経験した。こうした症例で、当該研究に使用可能な凍結生組織を採取し保存した。 ②レーザーマイクロダイセクション:保存した凍結脳組織から4micron厚の薄い組織標本を切り出し、特殊なコーティング加工を施したスライドガラスに進展させた。次いで、対象切片のHE染色像を顕微鏡下に確認しながら、レーザーマイクロダイセクション(Leica)で、複数のdysmorphic neuronを選択的にパンチアウトし収集した。こうした材料から核酸を精製し、PIK3CA, AKT3, MTOR genesのexome sequencing解析を開始した。 ③Western blotting:細胞内情報伝達系関連蛋白は、リン酸化の有無によって活性型と非活性型の変換が行われている。上記材料を用い、同伝達系分子のリン酸化特異抗体を用い、Western blottingによる蛋白発現解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①当該症例の病理組織学的診断と材料の蓄積:本研究課題では、てんかん原性としての皮質異形成病巣にdysmorphic neuronの出現を伴う稀な症例を対象としている。その病理組織学的診断には、てんかん外科病理学に関する専門的な経験知を必要とする。皮質異形成症例は約20例、片側巨脳症に類似する高度の病巣を呈する症例は11例を経験した。こうした症例で、当該研究に使用可能な凍結生組織を採取し保存した。 ②レーザーマイクロダイセクション:保存した凍結脳組織から4micron厚の薄い組織標本を切り出し、特殊なコーティング加工を施したスライドガラスに進展させた。次いで、対象切片のHE染色像を顕微鏡下に確認しながら、レーザーマイクロダイセクション(Leica)で、複数のdysmorphic neuronを選択的にパンチアウトし収集した。こうした材料から核酸を精製し、PIK3CA, AKT3, MTOR genesのexome sequencing解析を開始した。 ③Western blotting:細胞内情報伝達系関連蛋白は、リン酸化の有無によって活性型と非活性型の変換が行われている。上記材料を用い、同伝達系分子のリン酸化特異抗体を用い、Western blottingによる蛋白発現解析を開始した。 上記の進行状況であることから、研究はおおむね順調と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
①体細胞変異の検証には、当該患者における脳病巣以外の組織で、分子異常が観察されるかどうかも重要である。手術対象となった患者に、再度研究目的等を説明し、informed consentが戴けた場合には採血を行い解析対象に加える。 ②exome解析のためには、十分量のgenomeが精製される必要がある。レーザーマイクロダイセクションによる組織採取を更に多数例で行い、当該遺伝子変異の有無を検定する。 ③蛋白発現解析には複数の症例を同時に電気泳動し、数値化して有意差を検定する必要がる。コントロールとして、てんかん原性病巣として採取された他の病態:focal cortical dysplasia type Iを用いて検定を進める。 上記の解析結果をもとに研究を総括する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究目的を達成するためには、実験を継続的に実施する必要がある。その際、研究に必要な消耗品は、無駄にならないようその都度購入し使用することが必要であった。そのため、研究の遂行に合わせた形で予算執行を行っていることから、次年度使用額が生じたものである。 研究を継続するにあたり、必要な消耗品を購入する。研究成果を学会等で発表するための旅費として使用する。研究成果を論文として発表するための、英文校正料金、投稿料に充てる。
|