研究実績の概要 |
てんかん外科病理診断の経験から、限局性皮質異形成(FCD)は細胞内情報伝達蛋白合成系における体細胞変異が原因であるとの仮説を立てた。本研究はこの仮説を検証し、その分子病態を明らかにすることを目的に行った。 難治性てんかん患者:特に乳幼児や小児の脳から摘出された外科手術標本を対象に、FCDの臨床病理学的スペクトラムを解析するとともに、本研究に必要な凍結脳組織と血液サンプルの採取を進めた。FCDは臨床病理学的に3つのtype (I, II, III)に分類される。このうち、皮質神経細胞の構築異常に加え、dysmorphic neuronとballoon cellの出現を伴う脳病巣は、FCD type IIbと亜分類される。本研究では、難治てんかん原性脳組織がFCD type IIbの特徴を示す患者の凍結脳組織と血液を対象に、次世代シークエンサーによる全エクソーム解析を行い、脳病巣特異的な超低頻度の体細胞変異を見出した。候補遺伝子Xの変異解析を行い、複数の有意な変異を見出した。このX遺伝子変異は、FCD type I, IIaには認められなかった。Western blottingによる発現解析を行い、X遺伝子産生蛋白の下流に位置する情報伝達系の発現が亢進していることを見出した。In vitro系を用いた発現解析では、患者脳に認められた体細胞変異を強制発現させた場合には、同情報伝達系の機能が亢進していた。このように、本研究で見出したX分子の体細胞変異が、FCD type IIbの病因であることが明らかとなった。本研究結果は国際学術誌に投稿済みであり、現在provisional acceptanceの状況にある。
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