研究課題
1. 目的と方法:本研究は、「根本的治療法が無いパーキンソン病の黒質ドパミン神経細胞死を防ぐ」ことを最終目標として、アルファシヌクレイン遺伝子組換えパーキンソン病モデル(aSynTg)マウスにマグネシウム(Mg)-L-スレオネート(脳および脳脊髄液中のMg濃度を10~20%上昇せしめるという。今回はA社とB社から購入)を飲用投与し、行動解析と線条体ドパミン量を定量し、Mg-L-スレオネートがaSynTgマウスの線条体ドパミン濃度と行動の改善を起こすか、生後6ヶ月まで生存させ、wild type (WT)と比較しつつ定量的に分析した。2. 結果:(1)フットプリント(歩行時の足の運び)の、前脚および後脚幅、前後脚差は、WTよりaSynTgマウスで広い傾向が見られた。Mg-L-スレオネート投与でaSynTgマウスで前脚および後脚幅、前後脚差の改善傾向は見られなかった。(2)aSynTgマウスはケージの壁に向かってジャンプし続ける習性を示す。この頻度は、Mg-L-スレオネート投与群で減少したものも見られたが、個体ごとのばらつきが大きく、非投与群との有意差は見られなかった。(3)線条体のドパミン濃度をELISA法により計測した結果では、ドパミン濃度は、WTよりaSynTgマウスで少なく、Mg-L-スレオネート(A社)投与群ではaSynTgマウスで有意に増加した。3. 考察:aSynTgマウスへのMg-L-スレオネート投与では、歩行時の前脚および後脚幅、前後脚差の改善も、壁に向かってジャンプし続けるという行動にも改善は見られなかった。しかしMg-L-スレオネート(A社)投与aSynTgマウスで線条体ドパミン濃度が有意に上昇したことは、本研究の大きな成果と考えたい。Mg-L-スレオネートは、欧米などではサプリメントとしてヒトが摂食している物質であり、危険性は指摘されていない。パーキンソン病患者への投与を目指してその有効性をマウス等で更に検証していく必要がある。
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