研究課題/領域番号 |
25640030
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
橋本 款 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 副参事研究員 (50189502)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / シヌクレイン / アディポネクチン / 糖尿病 |
研究概要 |
糖尿病が神経変性の危険因子であることや神経変性疾患と生活習慣病に共通の病態的なメカニズムが存在することが注目されている。このことから、パーキンソン病を含めたシヌクレイノパチーの病態における代謝の変化に着目することは重要であり、抗糖尿病因子アディポネクチン(APN)の投与/添加により病態にどのような変化がもたらされるか非常に興味深い。 我々は、細胞内の代謝産物(核酸、アミノ酸、有機酸、脂肪酸など)を網羅的に測定するメタボローム解析を用いてシヌクレイノパチーモデル(マウス・培養細胞)の代謝の変化を検討した。その結果、マウス・培養細胞両モデルにおいて、ミトコンドリアのTCA回路中に入る物質がそれぞれの対照群と比較し減少する傾向がみられ、シヌクレイノパチーモデルでは糖代謝に異常があるような所見を呈する結果を得られた。これまでの我々の研究では、APNがαシヌクレイン(αS)の凝集を抑制するなど抗神経変性効果を示したが、マウス・培養細胞両モデルにAPNを投与/添加した結果、GMPやIMPといった低リン酸化ヌクレオチドが減少することがメタボローム解析により明らかとなった。低リン酸化ヌクレオチドはDNA・RNA合成やATP合成の材料となるため、APNの投与により核酸やATP合成が亢進している可能性が考えられる。興味深いことに、試験管内でGMPおよびIMPが濃度依存的にαSの凝集を促進することがわかった。このことから、APN投与/添加による細胞内GMP、IMPの低下が、APNによるαS凝集抑制メカニズムの一因であることが示唆された。以上の結果より、APNの経鼻腔投与/添加による治療の可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、糖尿病をはじめとする生活習慣病とシヌクレイノパチーなどを含めた神経変性疾患との関連性が明らかになりつつあり、慢性炎症やミトコンドリアの異常など類似した病態メカニズムが存在することがわかってきた。この観点から神経変性疾患と他の生活習慣病と共通の治療ターゲットがあるのではないかと考え、抗糖尿病因子として知られるアディポネクチン(APN)に着目した。脳神経におけるAPNの機能は未だ不明点が多いが、中枢神経系を介してエネルギー代謝や神経保護に関与することが近年報告されている。そこで本研究では、PD及びDLBなどのシヌクレイノパチーの病態において、APNがα-シヌクレインの神経毒性に対し抑制因子として機能するという仮説を立て、剖検脳や培養細胞・動物モデルを用いて解析をおこなった。その結果、APNがシヌクレイノパチー病態において抑制的に作用することが示され、中枢神経系におけるAPNおよびAPNシグナルがシヌクレイノパチーに対する効果的な治療ターゲットになりうる可能性が示唆された。今後もさらにこの問題に関して詳しく明らかにしたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
メタボローム解析によりシヌクレイノパチーモデルにおける糖代謝異常やAPN投与/添加による低リン酸化ヌクレオチドの変化が観察された。 本研究費で得られた成果をさらに発展させてパーキンソンなどシヌクレイノパチー神経変性疾患の治療にいきたいと考えている。現在、米国神経科学会の関連雑誌に現在投稿中であり、。今回得られた知見より研究を発展させ、さらにAPNによるシヌクレイノパチーの治療や脂肪組織と神経変性病態との関連を明らかにしていきたいと計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
リコンビナントアディポネクチン蛋白が予定していた金額よりも安価で購入できたため、残金が生じたため。 平成26年度のリコンビナント蛋白の購入に充てる。
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