研究課題/領域番号 |
25640031
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
猪原 匡史 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (00372590)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Sirt1 / 長寿遺伝子 / 両側総頸動脈狭窄術 / 内皮型一酸化窒素合成酵素 / 一酸化窒素 / 脳循環予備能 / レスベラトロール |
研究概要 |
プリオンプロモーターを用いたトランスジェニックマウス(Tgマウス)作成システムを用い,マウス脳に哺乳類Sirt1を過剰発現させた.Sirt1-Tg/野生型マウスに10分間の一過性両側総頸動脈閉塞(BCAO)または永久両側総頸動脈狭窄(BCAS)負荷を加えた.レーザースペックル血流計(Omegazone)を用いて脳血流を評価したところ,BCAO群においては,野生型マウスで閉塞10分後に脳血流が前値の平均20%(n=4)にまで低下したのに対して,Sirt1-Tgマウスは平均45%(n=6)までの低下にとどまった.さらに,BCAS群においては,野生型マウスで狭窄2時間後の脳血流が前値の平均75%(n=6)まで低下していたのに対して,Sirt1-Tgマウスは全く低下しなかった(平均95%, n=5).この保護効果はSirt1活性化薬レスベラトロールによって再現され,内皮型一酸化窒素合成酵素阻害薬cavtratin投与によって消失した.このことから,Sirt1-Tgマウスは高い一酸化窒素産生能によって脳循環予備能を維持していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sirt1-Tgマウスは高い一酸化窒素産生能によって脳循環予備能を維持していることが明らかとなり,現在までに得られたデータをまとめて論文投稿中のため.
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今後の研究の推進方策 |
①動脈/血管機能の評価:ラテックス灌流法や5%二酸化炭素吸入下でのFITC-dextranを用いた脳表血管のリアルタイムイメージング,さらにはHE染色やPECAM抗体を用いた免疫染色法にて血管の構造・機能を評価する.また,BrdU(0.5 mg/Kg体重)腹腔内注射1日後の血管壁へのBrdU取り込みを血管内皮細胞増殖能の指標として評価する. ②行動学的評価:Rotarodによる運動機能評価,バーンズ迷路/放射状迷路による認知機能評価を行う. ③組織学的評価:免疫染色による,Sirt1の標的因子,p53, NFκB, FOXO1, Ku70の発現量の変化の検討を行う.さらには,HE染色,GFAP染色,MHC-II染色による大脳皮質・海馬の微小梗塞の検索を行う ④Tie2プロモーターとGFAPプロモーターを用いた新規Tgマウスの創生:上述したプリオンプロモーターは神経細胞,血管内皮,アストロサイトに目的タンパク質を発現させており,Sirt1-Tgマウスの虚血耐性機序をより細胞特異的に解析するために,血管内皮特異的(Tie2プロモーター),アストロサイト特異的(GFAPプロモーター)にSirt1を発現するマウスを作製し,上記と同様のメカニズム解析を行う. ⑤Sirt1活性化薬レスベラトロールを用いた臨床応用:Sirt1を活性化する薬剤として上述したレスベラトロールが知られている.国立循環器病研究センターに通院中の頸動脈狭窄患者に対してレスベラトロールを投与する臨床試験を行う.レスベラトロールは既にサプリメントとして販売されているため,疫学研究に関する倫理指針に則った臨床試験計画を現在策定中である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に伴い,顕著な脳循環予備能の改善という,当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから,その知見を使用し十分な研究成果を得るために,当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより,その調整に予想外の日数を要したため年度内に完了することが困難となった. 詳細な実験のために,マウスの購入.
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