研究課題
近年長寿遺伝子と称されるサーチュインの一つSIRT1は,これまで心筋梗塞などの心血管障害,アルツハイマー病などの神経変性疾患において抗アポトーシス作用,抗酸化作用を介して保護作用を発揮することが報告されてきたが,脳血管系への直接的な作用については報告がなかった.そこで,本研究では,SIRT1過剰発現マウスに対して両側総頚動脈に約50%の狭窄手術(BCAS手術)を行うことで,SIRT1による脳虚血抵抗性を検証した.野生型マウスと比較してSIRT1過剰発現マウスでは,BCAS術後1か月の認知機能,脳病理所見が有意に保たれた.こうしたSIRT1の効果は,内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の阻害薬Cavtratinの投与により消失したことから,eNOSの活性化による脳血流量改善作用を介することが明らかとなった(Hattori Y, et al. Stroke 2014).BCAS手術後に野生型マウスではeNOSのアセチル化が見られたが,SIRT1過剰発現マウスではアセチル化eNOSはほとんど観察されず,脱アセチル化酵素SIRT1の作用によりeNOSのNO産生能が維持されたことがその機序と考えられた.以上より,SIRT1は脳血流量改善作用によって脳循環不全の予防・治療に寄与しうると考えられた.SIRT1は,より重度の虚血侵襲(両側総頚動脈閉塞術)に対しても脳血流量維持効果を有することが判明した(Hattori Y, et al. NeuroReport 2014).以上より,SIRT1を標的とする創薬が,脳梗塞や脳循環不全による認知症の予防・治療法の開発に結び付くことが期待された.
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