研究課題
挑戦的萌芽研究
小分子非コードRNAの一つであるマイクロRNAが、様々な標的遺伝子の発現制御等を通して、発生・代謝等の多様な生物学的機能を緻密にコントロールしていることが明らかになってきている。中枢神経系においては、その発達期における役割が序々に明らかになってきている。マイクロRNAは成熟脳にも豊富に発現しているが、成熟脳における機能に関する知見は極めて限定的である。本研究はマイクロRNAによる情動、特に報酬系の制御の分子基盤をマウス個体レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、すでにコカイン代謝との関連性を明らかにしているマイクロRNA(中澤ら、未発表データ)に注目し、以下の解析を行った。1)当該マイクロRNAはコカイン投与によって発現が誘導される。その分子機構を解析することを目的として、種々の細胞内情報伝達関連分子の解析を行ったところSrc型チロシンキナーゼが関与していることが明らかになった。Src型チロシンキナーゼが関与するシグナル伝達機構をさらに検討した結果、インテグリン受容体によってマイクロRNAの発現自体が誘導されることを明らかにした。2)当該マイクロRNAの欠損マウスの行動実験を行った結果、報酬系以外にも、情動系や鬱様行動の制御にも関与していることを明らかにしている。その分子機構を明らかにするためにマイクロRNAの発現している脳領域や細胞種をin situ hybridizationを用いて解析し、当該マイクロRNAがグリア細胞にはあまり発現せず、神経細胞に発現していることを明らかにした。3)当該マイクロRNAの標的分子は不明な部分が多い。マイクロRNA欠損マウスと野生型マウスの様々な脳領域からRNAを抽出し、マイクロアレイの系を用いて転写量が変動している遺伝子の同定を行った。また、コカインの投与による転写調節にも注目したマイクロアレイ解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
マイクロRNA自体の転写制御の分子基盤の一端としてSrc型チロシンキナーゼの関与の同定と解析を行うことができ、また、マイクロRNAの標的分子候補を複数個同定することができた。マイクロRNAの個体内での役割を明らかにするためにはさらなる解析が必要であるが、研究はおおむね順調に進展している。
マイクロRNAによる報酬系制御の分子機構を詳細に明らかにするとともに、どの神経核が関与しているか、あるいはヒト疾患との関連性はあるのか、についてさらに解析を推進する予定である。
2年分の研究計画自体には変更はないが、得られた研究結果から判断して、解析の順番を適宜変更したため、執行額が見込み額に比べて少額になった。研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額が異なったが、2年分の研究計画自体には変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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