研究課題
脳機能を媒介する神経機構を理解するためには、神経回路を構成する特定のニューロンの行動生理学的な役割の解明が必須である。これまで、目的のニューロンの機能を改変するため、さまざまな遺伝子操作技術の開発が進展してきた。本研究では、昆虫フェロモン受容体を利用して、特定のニューロンの活動を興奮性に制御する新規の遺伝学的技術の開発に取り組む。ショウジョウバエより単離されたionotropic receptor (IR)は、フェロモン依存性のイオンチャネルを形成する。これらのうち、IR8a/IR84a複合体は、フェニルアセトアルデヒドあるいはフェニル酢酸に反応する受容体を形成する。本年度は、in vivo電気生理においてフェニル酢酸投与によりトランスジェニックマウス青斑核(LC)の神経活動の増進が誘導された。また、マイクロダイアリシスにおいて、フェニル酢酸投与により、大脳皮質ノルアドレナリン遊離レベルの増加が誘導された。さらに、味覚嫌悪反応実験を用いて、条件付け刺激にも用いられた味覚物質を口腔内に導入し、嫌悪反応が誘発されるまでの潜時を測定した。フェニル酢酸0.4%および0.6%溶液を記憶想起の直前に投与することによって、トランスジェニックマウスの味覚反応潜時の短縮が認められ、記憶想起を増強する可能性が示唆された。
すべて 2015
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Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 13158
10.1038/srep13158