研究課題/領域番号 |
25640039
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
仲嶋 一範 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90280734)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 神経科学 / 大脳皮質 / 抑制性神経細胞 |
研究概要 |
大脳新皮質では少数の抑制性神経細胞が多くの興奮性神経細胞を制御する。最近の研究により、多くの精神神経疾患の発症がこの神経微小回路網内の興奮と抑制のバランス(E/Iバランス)の破綻と関係していることが示唆されるようになった。マウスなどのモデル動物においてこのバランスの破綻を人為的に操作することが可能になれば、精神神経疾患の病態解明に大きく貢献するものと期待される。我々はこれまでに、大脳新皮質内で本来興奮性神経細胞を産生するはずの神経前駆細胞に、ある特定の一つ遺伝子Xのみを導入し強制発現させることによって、抑制性神経細胞のマーカーであるγ-aminobutyric acid (GABA)を発現するようになることを発見した。そこで、この遺伝子Xを強制発現させた大脳皮質脳室帯由来の細胞が放射状移動中にGABAを発現し始める部位を調べたところ、大脳皮質の中間帯上部/subplate領域に侵入すると発現することを見いだした。そこでさらに、抑制性神経細胞への分化方向の変換にこの中間帯上部/subplate領域の細胞外環境が重要であるか検討した。まずは、この遺伝子Xを強制発現させた大脳皮質脳室帯由来の細胞を含む大脳皮質全体を用いて神経細胞の分散培養を行った。その際に細胞の密度を変えて培養を行い、遺伝子Xを強制発現させた細胞がGABA陽性となる割合の変化を調べた。その結果、培養細胞の密度を高くすると、GABAを発現する神経細胞の割合が増加することがわかった。このことから、中間帯/subplate領域を含む大脳皮質には、この遺伝子Xを強制発現させた細胞においてGABAの発現を促す細胞外環境が存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
途中までは順調に進んでいたが、年度途中にマウスの飼育室において感染事故があり、飼育していた全マウスを処分してクリーニングし直す必要があったため、実験に必要なマウスの確保に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質の中間帯/subplate領域にGABAの発現を促す細胞外環境が存在するかを調べるため、遺伝子Xを強制発現させた脳室帯細胞を脳スライス上に播種して培養するなどの実験を予定している。また、遺伝子Xを内在的に発現している部位を、特に本来抑制性神経細胞が産生される部位を中心に検索し、これらの部位やその隣接部位に、大脳皮質脳室帯に遺伝子Xを強制発現させた細胞を抑制性神経細胞に分化させる細胞外環境が存在するか培養実験等により検討する。存在すれば、大脳皮質の中間帯/subplate領域と共通の活性を持つ細胞外環境が存在する可能性が示唆されるため、その検索へと進む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの飼育室において感染事故があり、飼育していた全マウスを処分してクリーニングし直す必要があったため、実験に必要な十分な数のマウスを確保するために時間を要した。 当初25年度に予定していた、遺伝子Xを強制発現させた脳室帯細胞を脳スライス上に播種する実験、遺伝子Xを内在的に発現している部位の検索とそれを用いた共培養実験などを、マウスを用いて行う。
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