私たちはこれまでに、染色体DNA複製時の忠実度を低下させたC57BL/6マウス系統を作製し、この遺伝子変異率増加マウスを継代することにより、高頻度に蓄積されていく突然変異による生きたマウス個体の表現形質の解析を進めてきた。その結果、現在までに25世代の継代を重ねて解析し、既に生きたマウス個体において、これまでにない新たな表現形質が得られてきている。その中には、大規模なミュータジェネシス実験では得られていない「小鳥のようにさえずるマウス系統」、「足指数減少マウス系統」などの新規マウス系統も得られている。また、継代を進めたマウスでは、体重や体長などの量的形質のばらつきが大きくなることが明らかとなり、産子数の減少も認められてきている。また、継代したマウス系統についての全ゲノムシーケンスを行うことができ、野生型マウスでの変異率より10倍以上高い変異率での蓄積していることが確認できた。この様に、生きたマウス個体レベルでの量的形質と遺伝的多型を解析する新たなヒト疾患モデル作製システムの構築ができたと考えている。
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