従来技術によるモデル動物作製は、予期しない遺伝子発現制御、系統維持の問題から多大な労力が費やされてきた。これら課題を解決するために、本研究では簡便化を可能とする新規モデル動物作製システム開発を目的として、マウス個体において極めて安定なマウス天然染色体由来マウス人工染色体(MAC)ベクターを用い、ヒトゲノムの導入および対応遺伝子の翻訳除去を同時に行い、簡便なヒト型モデルマウス作製を目指す。 本年は以下のステップで研究を進めた。 1. 複数遺伝子搭載可能MACベクターの構築(MI-MACベクターと呼ぶ): MAC ベクターへの各種遺伝子搭載はCHO細胞内において行った。MACベクター上のloxPサイトに複数遺伝子搭載用プラットフォームを導入した。 2. MI-MACの動作確認:上記MI-MACベクター上の複数遺伝子搭載部位が正確に機能するかを確認するために、遺伝子の搭載されていない空ベクターを各種サイトへ導入することで、各サイトが機能することを確認した。また、DNAの確認はPCR法により行い、MAC上へのみの遺伝子搭載の確認はFISH解析により行った。 3. マウス・ラットPxrを共通してノックダウンするshRNAの選別: 培養細胞を用いた遺伝子導入実験により、マウスおよびラットPxrを共通にノックダウンするshRNAを5つ選別した。ヒト繊維肉腫(HT1080)細胞株にshRNA の標的であるマウスおよびラットPxr遺伝子発現ベクターを候補のshRNA 発現ベクターとリポフェクションにより共導入し、ノックダウンの効率をリアルタイムPCRで検証した結果、2つの候補shRNAを選別した。一方、ヒトPXR発現ベクターと候補shRNA発現ベクターの共導入も実施し、ヒトPXR遺伝子発現に影響がないことも確認した。
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