研究課題/領域番号 |
25640051
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
外丸 祐介 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (90309352)
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研究分担者 |
河野 友宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80153485)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発生工学 / リプログラミング因子 / クローン動物 |
研究概要 |
核移植によるクローン動物の作製効率の改善に向け、ドナー核がリプログラムされるメカニズムやその誘導因子(リプログラミング因子)の解明に取り組んでいる。本課題では、「標的因子は卵子内で局在性を示す」という仮説を基に、「核を除去した間期の卵子細胞質には存在せず、その除去した核を含む細胞質に存在し、且つ未受精卵細胞質中に存在するタンパク質」の分離・解析を実施することで、卵子特異的なリプログラミング因子の探査にあたる。 平成25年度においては、標的タンパク質を分離・解析するための材料であるマウスの未受精卵、間期受精卵(前核期卵)、核を除去した前核期卵の細胞質、および前核期核とその周辺細胞質の収集作業にあたった。PMSGとhCGの投与により過剰排卵誘起処置を施したBDF1雌を供試し、未受精卵の場合はhCG投与から16-18時間目に排卵卵子を回収し、酸性液で透明帯を除去した後、-80℃で約2,800個を保存した。前核期卵の場合は雄マウスとの交尾を設定してhCG投与から20-24時間目、もしくは体外受精後8-12時間目の受精卵を回収し、同様の手順で約2,200個を保存した。核を除去した前核期卵の細胞質および前核期核とその周辺細胞質の場合は、前述の手順で回収した受精卵について細胞骨格重合阻害剤を含むPBI液中で顕微操作することでそれぞれを分離し、同様の手順で各々約1,000個を保存した。その他、リプログラミング関連遺伝子の解析について予備的実験を行った。 また、今後の予定・方針について、分担研究者ならびに技術委託予定の専門業者と打合せを行い、最新情報の収集と予定確認を行った。その結果、タンパク質分離手段として予定していた二次元電気泳動法と比較して2倍程度の分解能を持つ新規手段を利用可能であることがわかり、材料収集の目標を半分程度に削減することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標的タンパク質を分離・解析するためには150μg程度のタンパク質を得る必要があり、マウス卵子1個あたりのタンパク質量を30ng程度と見込み、未受精卵:5,000個程度、間期受精卵(前核期卵):5,000個程度、核を除去した前核期卵の細胞質:10,000個程度、前核期核とその周辺細胞質:15,000個程度の収集を目標としていた。しかし、その後に得たタンパク質分析に関する新規情報により、当初予定していたタンパク質分離手段の2倍程度の分解能を持つ新規手段を利用できることがわかり、材料の収集目標を当初計画の半分程度とした。 この為、上記の未受精卵と前核期卵については目標数に達し、一旦収集を終了した。しかし一方で、核を除去した前核期卵の細胞質および前核期核とその周辺細胞質については、20%程度しか達成できていない。この為、当初計画では、平成25年度中に材料採取を終えて、これらを用いてタンパク質の分離と解析を開始する予定であったが、後者の着手には至っていない。 この原因として、当初に材料採取担当として予定していた人員(連携研究者)が他業務の都合で作業従事が困難な時期があり、着手時期が遅延してしまったことがある。これに加えて、当初の想定に比して材料採取効率(マウス受精卵採取と顕微操作作業の効率)が低かったことも起因している。しかし現状では、前者については解決済みであり、また後者についても改善が進んでいることから、当初計画からは約6ヶ月程度の遅れとなるが、次のステップへ進むことができる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
標的タンパク質を分離・解析の材料採取の行程において当初計画に遅延が生じているが、行程終了の目処がついたことから、次の行程である標的タンパク質の分離・解析に取り掛かる予定である。すなわち、収集した材料におけるタンパク質の分離を専門業者に技術委託することで「核を除去した間期の卵子細胞質には存在せず、その除去した核を含む細胞質に存在し、且つ未受精卵細胞質中に存在するタンパク質」を抽出した後、質量分析装置による測定および当該遺伝子のホモロジー検索を実施し、卵子における発現を確認することでリプログラミング因子の一次候補遺伝子とする。先ず、「未受精卵に存在し、かつ核を除去した前核期卵の細胞質には存在しないタンパク質」の探査・検証を優先的に進める。また、この探査・検証で十分な成果が得られない場合を考慮して、同時に材料採取を継続実施し、必要に応じて「未受精卵、間期受精卵(前核期卵)、および前核期核とその周辺細胞質に存在し、核を除去した前核期卵の細胞質、および体細胞に存在しないタンパク質」を標的としての探査・検証に取り掛かる。なお、この行程では、特に研究分担者および委託業者との連携を密に取り、候補遺伝子の選抜を十分な議論の上で慎重に進める。 これらの行程を経ることで一次候補遺伝子の選抜が達成された場合は、当初計画に沿って、タグ遺伝子を融合させた発現ベクターを作製し、卵子にインジェクションすることで核への局在を確認する。さらに、体細胞での未分化マーカーの発現誘導およびクローン胚発生能への効果を検討し、実際にリプログラミング能力を有するか否かの検証を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中の研究実施計画として、先ず、実験材料である卵子等の収集を行い、次いで、これらの材料を用いて標的タンパク質の分離と解析を開始する予定であった。しかしながら、前者の行程において従事者の確保困難や想定以上に材料採取効率が低かったことにより研究の進捗に遅延を生じた為、当該年度内に後者の行程に進むことができず、次年度(平成26年度)に実施せざるを得ない状況となった。この結果、後者の行程を実施するにあたっては専門業者に委託することとして当該年度は800千円の研究経費を計上していたが、予定通りの執行には至らず、次年度中の行程実施の際に使用する予定とした。この一方で、前者行程の長期化によりマウス飼育費や消耗品費等の支出が計上額を上回ってしまった為、最終的には標記の次年度使用額となった。 平成25年度中の研究実施計画の行程において、従事者の確保困難ならびに想定以上に材料採取効率が低かったことにより研究の進捗に遅延を生じ、実施開始を平成26年度に先送りせざるを得ない行程が生じた為、次年度使用額が生じる結果となった。しかし現状では、従事者の確保困難については解決済みであり、また材料採取効率についても改善が進んでいることから、当初計画からは約6ヶ月程度の遅れとなるが、平成26年度中に次の行程に着手できる予定である。このことから、この度生じた次年度使用額は平成26年度上半期中に執行を完了する予定である。 なお、研究実施計画からの遅延については回復に努めながら、平成26年度に実施予定としている行程についても併行して進める予定であることから、研究経費の執行も計画に沿ったものとなる予定である。
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