研究実績の概要 |
本課題では、核移植によるクローン動物の作製効率の改善に向け、「標的因子は卵子内で局在性を示す」という仮説を基に、「核を除去した間期の卵子細胞質には存在せず、その除去した核を含む細胞質に存在し、且つ未受精卵細胞質中に存在するタンパク質」の分離・解析を実施することで、卵子特異的なリプログラミング因子の探査にあたる。 平成26年度までに、卵子由来サンプルをLC-MS/MS分析に供することで818種類のタンパク質について定量比較し、サンプル間の存在比が仮説に相当した93種類のタンパク質内で最大比(2.812倍)であったヌクレオプラスミンをリプログラミング因子の第一候補として研究を進めた。平成27年度では、先ず免疫染色により卵子中の分布を調べることで想定通り細胞周期間期では核に局在することを確認した。次にタグ遺伝子を連結したヌクレオプラスミン発現ベクターを作製し、これを用いて精製したmRNAを卵子にインジェクションすることで、タンパク質合成と発生への影響を調べた。未受精卵にインジェクションした後に活性化処置を施して作製した前核期卵についてタグ抗体での免疫染色により調べた結果、タンパク質合成と核における局在を検出することができた。また、体外培養により発生への影響を調べた結果、注入量が約100ng/microL x 0.5pL、約500ng/microL x 0.5pL、約1,000ng/microL x 0.5pLのいずれの場合でも胚盤胞への発生率に差は認められなかった。これらの結果を受けて、約1,000ng/microL x 0.5pLを核移植の際に同時注入することでクローン胚を作製し、体外培養および移植試験により発生への影響を確認するに至っている。
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