研究実績の概要 |
ブタは家畜であるのみならず、移植・再生医療の研究分野では欠くことの出来ない実験動物に位置づけられている。本研究は、申請者らが樹立したマウスES細胞、ブタES様細胞を用い、ニワトリ胚およびマウス胚を宿主とした異種間キメラ胚を作製し、異種間キメラを利用した幹細胞の多分化能評価システムの開発と、新たな実験モデルの創成を目指す。H26年度は以下を行った。 ブタ-マウスキメラ胚:EGFP発現ブタES様細胞(pES-EGFP)をマウス胚盤胞期胚にインジェクション(1-20細胞)し、胚移植を行った。発生後期では死滅、発生遅延が頻発するため7日相当胚でのキメラ解析を行った。7日胚の生存率は28%、そのうち蛍光発現率は25%であった。しかし、胚組織にpES-EGFPは確認されず、胚体外組織に数個のpES-EGFPが確認されたのみであった。 ブタ-ニワトリキメラ胚: pES-EGFPを放卵直後のニワトリ胚盤葉にインジェクション(4,000細胞)し、培養を行った。3日胚の生存率は44.8%、胚組織での蛍光発現率は30.8%であったが、キメラを構成するpES-EGFP細胞数が少なく、免疫染色によるキメラ解析には進まなかった。 マウス-ニワトリキメラ胚:マウス胚およびニワトリ胚の発生に対してpES-EGFPの増殖速度が遅いことがネックになっていると考えられた。そこで、EGFP発現マウスES細胞(mES-EGFP)とニワトリ胚における異種間キメラ作製について検討した。7,500細胞を同様にインジェクションしたとき、3日胚と8日胚の生存率はそれぞれ100%と36%、胚組織における蛍光発現率はそれぞれ68%と30%であった。mES-EGFPは特に頭部、頚部、心臓に存在した。さらに、mES-EGFPはニワトリ胚で効率よくテラトーマを形成することが明らかになった。現在、論文化に向けて解析を進めている。
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