研究課題/領域番号 |
25640060
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩光 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (80645474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 膵臓癌 / 転移 / DCLK-1 |
研究概要 |
本研究の目的は、膵癌幹細胞を標的とした難治性癌の克服である。昨年度は、当科で作成した膵癌幹細胞可視化システム(Gastroenterology2012)を用いて2つのヒト膵癌細胞株で(1)網羅的遺伝子解析、(2)DNAメチル化解析を行い分子生物学的側面からのアプローチを行った。まず、(1)網羅的遺伝子解析において、両株の癌幹細胞で強い発現を有しているDCLK-1に注目し実験を進めた。DCLK-1は神経領域で研究が進んでいる遺伝子であるが、近年、消化管の癌幹細胞としての性質を有することが示された(NatureGenetics2013)。このDCLK-1はDCX領域(微小管結合・形成促進作用)とSTキナーゼ配列からなる2機能性分子で、DCX領域は神経細胞の遊走を誘導するDCX蛋白と約70%のアミノ酸が相同である。In Vitroで遊走能を比較したところ、DCLK-1が高発現している癌幹細胞は高い遊走能を有していることが示された。また、NNOD/SCIDマウスによる経脾肝転移モデルでは癌幹細胞において高率に転移することが示唆され、一部の臨床検体では、原発巣と比較して転移巣でDCLK-1が強く発現していた。本年はDCLK-1をKnock outした株を作成しIn vivoでさらなる検証を行う予定とし、膵癌の転移メカニズムを解明していきたい。(2)48万箇所のDNAメチル化を解析したところ、2つの細胞株に共通な324probeでisland領域の脱メチル化が起こっていることが示された。脱メチル化により発現が亢進していると考えられる遺伝子としてCYP1A1を同定した。それぞれの解析で、癌幹細胞とその他の細胞の間で遺伝子発現、DNAメチル化の変動が認められ改めて癌の多様性が示唆されたが、統合解析において特徴な結果は未だ明らかとなっておらず、現在も検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的遺伝子解析より癌幹細胞の遊走能と深く関わる遺伝子DCLK-1を同定した。しかし、DNAメチル化解析などのエピゲノムの側面からの解析は未だ検討中であり本年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの可視化された癌幹細胞に加え、DCLK-1をKnock downした癌幹細胞も作成し、NOD/SCIDマウスを用いた経脾肝転移モデルで比較する。さらに詳細な検索を行い、エピゲノムの側面から癌幹細胞へのアプローチを進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の試薬が、当初予定していた金額を上回ってしまったため、次年度に計上することとなった。そのことで研究に支障はなかった。 試薬類および動物実験費のために使用する予定である。
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