我々は、遺伝性乳がん原因遺伝子産物のBRCA2が細胞質分裂のミッドボディに局在するⅡ型ミオシンⅡCのATPase活性を制御することを見出してきた。また、細胞質分裂のミッドボディの切断において、BRCA2がTsg101、ALIXを制御することも報告されている。一方、エンドソーム小胞をエンドソーム膜から切断する際にTsg101、ALIXやESCRT複合体が結合した後、VPS4 ATPaseが複合体を解体して小胞形成が進行すると考えられていることから、我々は、BRCA2がTsg101、ALIX、VPS4を制御することでエンドソーム形成にかかわる可能性を考えた。BRCA2のエンドソームの存在有無を検証するため、初期エンドソームと後期エンドソームの分画を行った。各エンドソームライゼートをイムノブロットで解析した結果、初期エンドソームマーカーであるRab5と同一画分にBRCA2を検出した。そこで、初期エンドソームライゼートに対して、抗BRCA2抗体を用いて免疫沈降を行い、質量分析計で解析した結果、Syntaxin-19を同定した。Syntaxin-19は、機能未知なタンパク質であるが、SNAREタンパク質ファミリーの1つとして報告されて、同じファミリーの中にはエンドソームで機能するSyntaxin-5やSyntaxin-6が存在する。これまでのところ、免役沈降法により、BRCA2とTsg101、ALIXおよびVPS4との相互作用は検出されていないことから、エンドソーム形成の際にBRCA2がTsg101、ALIX、VPS4と同一の系で働く可能性は低いと考えられた。しかしながら今回の研究成果は、BRCA2が初期エンドソームに存在し、そのパートナータンパク質の候補を見出すことが出来て、エンドソームにおけるBRCA2の新規機能を解明する手がかりが得られたことから非常に大きいと考えている。
|