研究課題/領域番号 |
25640065
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本田 浩章 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40245064)
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研究分担者 |
上田 健 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60585149)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒストン脱メチル化酵素 / Fbxl10 / トランスジェニックマウス / 白血病 / 造血幹細胞 |
研究概要 |
我々は、ヒストン脱メチル化酵素であるKdm2bに着目し、造血幹細胞(hematopoietic stem cells, HSCs)でKdm2bを高発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、Kdm2b Tgは生後約1年で白血病を発症することを見いだした。その原因を検索する目的で、白血病細胞とコントロールの脾臓細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行ない、白血病細胞において酸化的リン酸化経路の遺伝子群が有意に発現上昇していることを見いだした。さらに、白血病を発症する前のKdm2b TgのHSCsを単離してGSEAを行なったところ、同様に酸化的リン酸化経路の遺伝子発現の上昇が認められ、酸化的リン酸化活性化は白血病発症と維持の両方に関与していると考えられた。 今年度は酸化的リン酸化経路関連遺伝子の発現上昇がKdm2bによる直接作用かについて、コントロールマウスとKdm2b TgマウスからHSCsを単離し、抗Kdm2b抗体を用いたChIP解析により検討を行なった。その結果、酸化的リン酸化経路の遺伝子のうち、Ndufb2, Ndufs6, Uqcrfs1の遺伝子座において、コントロールに比べてKdm2b Tg HSCsに有意に集積が認められた。また、コントロールマウスとKdm2b TgマウスのHSCsにおけるATP産生を測定したところ、コントロールに比べてKdm2b Tg HSCsでATPの有意な産生上昇が認められた。さらに、BrdUとPyronin Yを用いてHSCsの増殖能および細胞周期を検討したところ、細胞周期は変化は無かったが、Kdm2b Tg HSCsで有意な増殖能亢進が認められた。これらの結果は、Kdm2b の脱制御によりHSCsにおいて酸化的リン酸化経路が活性化し、ATPが過剰産生され細胞周期が亢進することにより白血病発症に移行することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、平成25年の予定としていた項目について以下の結果を得た。 1)酸化的リン酸化経路関連遺伝子の発現上昇がKdm2bによる直接作用かどうかの検討:コントロールマウスとKdm2b TgマウスからHSCsを単離し、抗Kdm2b抗体を用いたChIP解析により、酸化的リン酸化経路関連遺伝子に結合するかどうかについて検討を行なった。その結果、酸化的リン酸化経路の遺伝子のうち、Ndufb2, Ndufs6, Uqcrfs1の遺伝子座において、コントロールに比べてKdm2b Tg HSCsに有意に集積が認められた。従って、これらの遺伝子発現上昇については、Kdm2bの直接作用と考えられた。 2)酸化的リン酸化経路の活性化による造血幹細胞機能変化の解析:コントロールマウスとKdm2b TgマウスのHSCsにおけるATP産生を測定し、Kdm2b Tg HSCsでATPの有意な産生上昇を認めた。さらに、BrdUとPyronin Yを用いてHSCsの増殖能および細胞周期を検討したところ、Kdm2b Tg HSCsにおいて、細胞周期には変化を認めなかったが、増殖能の亢進が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下を予定している。 1)酸化的リン酸化経路の活性化による白血病発症機構の解析 造血幹細胞における酸化的リン酸化経路の亢進が、いかなる機序により白血病発症に至るかについて、i) 活性化酸素種(reactive oxygen species, ROS)の測定, ii) DNA損傷の測定を行なう。 2)造血組織以外の組織におけるKdm2b脱制御による腫瘍発症の検討 Kdm2発現亢進による酸化的リン酸化経路の活性化と造腫瘍性の獲得が造血幹細胞に特化した現象であるのか、それとも組織幹細胞に普遍的な現象であるかどうかについて、造血細胞以外の細胞にKdm2bを過剰発現する遺伝子改変マウスを作製し、Kdm2発現亢進が固形がんにおいてもが腫瘍化に関与するかについて検討を行なう。
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