研究課題
挑戦的萌芽研究
胆管癌は、放射線・化学療法に抵抗性の高い難治性の癌である。近年、がん組織中のヘテロな細胞集団の中には造腫瘍能・薬物代謝能等が高い「がん幹細胞」が存在するとされている。このがん幹細胞は治療抵抗性をもつと考えられるため、良い治療標的となり得るが、胆管癌におけるがん幹細胞は不明な点が多い。我々は、がん幹細胞に関与する遺伝子を探索するため、胆管癌細胞株を用いて探索を行った。スクリーニングの結果、CD133(-)CD90(-)の分画は、NOGマウスにおける造腫瘍能が有意に高かった。マイクロアレイの結果、この分画ではCD274の発現が低下していることが判明した(3.6倍)。細胞をCD274(+)/(-)で分画し、NOGマウスに接種したところ、CD274(-)分画は著明に造腫瘍能が高かった。Aldefluor活性を比較すると、CD274(-)分画はaldefluor活性が高かった。DCFH-DAを用いてROS産生能を測定すると、CD274(-)分画でROS産生が低下していた。細胞周期を検討すると、CD274(-)分画ではG0/G1分画の比率が著明に高かった。Migration assay, scratch assayではCD274(-)分画において遊走能・移動能が低下していた。CD274をノックダウンすると、造腫瘍能は亢進し、ROS産生能が低下した。胆管癌細胞株においてCD274(-)分画は、がん幹細胞の性格を持つことが明らかになった。細胞周期・Migration/scratch assayの結果から、CD274(-)分画はdormantな状態のがん幹細胞に類似していると考えられた。ノックダウンの結果と合わせ、CD274はがん幹細胞の性格を規定する分子であることが考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
当研究計画の目的である、CD274ががん幹細胞の性質を規定する、という点に関して、細胞株を用いて証明することができ、この研究結果はすでに論文受理された。
CD274がいかなるメカニズムでがん幹細胞の性質を規定しているかは、未だ明らかではない。私たちは現在、CD274によって変動する遺伝子を同定し、その機能を明らかにしようと考えている。
予定していたマイクロアレイが、一旦研究成果をまとめ論文発表するために、延期された。次年度に集中的に行う予定である。2種類の胆道癌細胞(RBE, HuCCT1)においてCD274をノックダウンし、遺伝子変化の網羅的解析をマイクロアレイ(Agilent, 8x60k)を用いて行う。この結果から、CD274ががん幹細胞の形質維持に関わるメカニズムの解析を行う予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Sci
巻: 105 ページ: 667-674
10.1111/cas.12406