平成25年度は、膵癌特異的マーカー分子探索のため、GCTM-5陽性の膵癌細胞株を複数同定し、GCTM-5複合体のプロテオミクス解析と糖鎖アレイ解析を行ったが、十分なマーカー候補分子は得られなかった。またGCTM-5陽性細胞と陰性細胞間での網羅的遺伝子配発現析も行い、GCTM-5陽性細胞の表面に特異的な候補分子群を得たが、その数が多く、全てを検査するのは困難だった。この候補分子群から膵癌に特異的な分子を絞り込むため、GCTM-5陽性肝癌細胞での発現を調べることとした。様々な肝癌細胞株を入手・検査したが陽性株は得られず、ヒトiPS細胞から誘導した肝細胞についてもGCTM-5陽性細胞の出現が一定しなかった。 平成26年度は、解析に十分な肝癌細胞を安定して得るため、胆管癌細胞株を世界中から入手し検討したところ、複数のGCTM-5陽性株を同定できた。これにより遺伝子発現解析を開始できた。 一方で、GCTM-5抗体の膵癌検査能を確認するため、CA19-9抗体との比較も行った。その結果、GCTM-5とCA19-9抗体は、それぞれの精製抗原複合体を相互に認識することが分かった。しかし免疫染色では、ほぼ全てのCA19-9陽性細胞がGCTM-5陽性であるのに対し、GCTM-5陽性細胞にはCA19-9陰性の細胞があることが分かった。このことは、GCTM-5がCA19-9よりも多くの、あるいは早期の膵癌細胞種を認識できる可能性を示唆していた。 また、新規マーカー候補分子の解析・同定を待たずに新規バイオマーカー抗体を得るため、精製したGCTM-5複合体をそのままマウスに免疫し、モノクローナル抗体作製を試みた。得られたハイブリドーマについては順次、GCTM-5複合体と細胞株を用いたスクリーンングを行い、これまでに3種のGCTM-5陽性膵および肝癌細胞株を認識する抗体を得ることに成功した。
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