本研究ではフェリチンに「EpCAM」に強く結合するペプチド・アプタマー「Ep114」を提示させ、金属を内包させた後に、EpCAM発現エクソソーム亜集団を特異的に標識し、これに伴うエクソソーム表面の電荷変位や光反射率の変化で、EpCAM陽性ポピュレーションを定量化することをめざした。 得られたEp114発現フェリチン分子は、通常の精製プロトコールでは、十分な量が調製できないことが分かった。そこで、精製時に用いるバッファーの種類は、pHなどを多条件検討し、十分な量の精製Ep114発現フェリチン分子が調製できる条件を見いだした。 さらに、Ep114提示フェリチン分子の内部空間に、予定通り金属内包フェリチンを調製することができた。 コールターカウンターの一種「qNano」を用い、Ep114発現フェリチンとEpCAM陽性エクソソームの組合せに特異的なシグナルを探索したが、研究期間中には見いだすことはできなかった。共同研究で進めている電気泳動ベースのエクソソーム表面電位の一粒子計測機器と組み合わせることで、EpCAM陽性エクソソームの定量化をめざしていく。 さらに、金属内包エクソソームのエクソソームへの結合により、エクソソームの屈折率が大きく変わることが予想された。この変化を、Nanoparticle Tracking Analysis (NTA)法を原理とした「NanoSight」で捉える試みも進めたが、優位な差を見いだすことができなかった。金属ナノドットの表面をタンパク質が被うことで、強い屈折率の変化を抑えている可能性が示唆された。この研究の過程で、よりシンプルに、ナノ金粒子やナノカーボン粒子にアプタマーをつけたプローブが、エクソソームの表面性質を大きく変化させる可能性に気づき、現在、ナノ金属粒子を製造する日本企業と共同研究を進めている。このように、「アプタマー+ナノ金属粒子」を利用したエクソソーム亜集団の検出は、本研究の成果より、確実に一歩前進したと結論できる。
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