チアカリックスアレーンは架橋部位に硫黄原子を有するp-アルキルフェノールの環状オリゴマーで、金属イオンとの親和性が高く、容易に包接することができる。我々はこれまでに、チアカリックス[4]アレーンテトラスルホン酸(TC4ATS)-金属錯体が一部の白血病細胞株に対して選択的に細胞毒性を示し、in vivoにおいても抗腫瘍効果を示すことを明らかとしてきた。本研究では、チアカリックスアレーン-金属複合体の合成と抗がん作用を検討すること、さらにチアカリックス[6]アレーンヘキサスルホン酸(TC6AHS)類縁体が細胞周期の進行に与える影響を調べることを目的としている。平成26年度は、①TC6AHS類縁体の合成と細胞周期停止誘導活性、②細胞周期停止誘導活性に対するp-アルキルフェノールの重合度の影響、③TC6AHSを用いた動物モデルへの影響を調べた。 ①TC6AHSの誘導体5種(tert-ブチルチアカリックス[6]アレーン、チアカリックス[6]アレーン、プロポキシチアカリックス[6]アレーン、チアカリックス[6]アレーン酢酸エチル化体、チアカリックス[6]アレーンアセチル化体)を用いてがん細胞の細胞周期の進行に与える影響と細胞増殖に対する影響を調べた結果、TC6AHSがG2/M期停止を誘導するのに対し、チアカリックス[6]アレーンはG1期停止を誘導した。また、チアカリックス[6]アレーンはTC6AHS(IC50=30uM)よりも強い細胞増殖抑制効果(IC50=6uM)を示した。 ②8つのp-アルキルフェノールからなるチアカリックス[8]アレーンオクタスルホン酸(TC8AOS)を合成し、TC6AHSとTC4ATSと細胞周期停止活性を比較したところ、TC4ATSは活性を示さなかったのに対し、TC8AOSはTC6AHSの1.5倍の濃度(60uM)で、G2/M期停止活性を示した。
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