研究課題/領域番号 |
25640091
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
千住 覚 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (50274709)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単球 / 樹状細胞 / がん / 免疫療法 / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
癌免疫療法においては、HLA抗原により提示された癌抗原ペプチドに特異的なT細胞を誘導することが最も重要である。樹状細胞(DC)は非常に高いT細胞刺激能力を有する細胞であり、DCを用いた抗腫瘍ワクチン療法は広く行われている。これまでにDCワクチン療法が、腫瘍の縮小、生存率の改善に有用であるという報告もなされている 。 しかしながら、血液中に存在するDCはわずかであり、血液中のDCを採取して免疫療法に使用することは難しい。そこで 、一般には、DCワクチン療法を行うために、患者自身の単球(約1×108個)より、DCを作製することが行なわれている。そして、大量の単球を得るためにアフェレーシス操作による癌患者末梢血からの白血球分離が行なわれており、患者の負担が大きいという問題がある。この問題の解決法の一つとしてヒトiPS細胞からDCに分化させる方法があるが、個々のヒトiPS細胞樹立には時間がかかる上、ヒトiPS細胞からDCに分化させる段階でも約1ヶ月程度かかるという問題がある。 研究代表者らは、以前の研究において、ヒトの末梢血単球をin vitroにおいて増殖させる手法を開発していた。この手法により増殖させたミエロイド系血液細胞をCD14MLと命名した。CD14MLは、通常の末梢血単球と同様に、GM-CSFとIL-4の刺激により樹状細胞(CD14ML-DC)へ分化する。そこで、末梢血単球からCD14MLを作成し、増殖させた後、CD14ML-DCへ分化させる事により、大量の樹状細胞を作成できる。平成26年度の研究においては、CD14ML-DCを用いて各種腫瘍抗原に反応性を有するT細胞の誘導を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD14ML-DCを用いた腫瘍抗原に特異的なT細胞のin vitro誘導に関しては、従来のDCを用いた培養法の場合とは条件を修正する必要があることが判明した。これは、CD14ML-DCが、通常のDCよりも強いT細胞刺激活性を有しており、また、IL-12などのサイトカインの産生量も非常に多い事によるものと考えられた。そこで、培養系へ加えるCD14ML-DCの数を調整する等の条件を検討し、最適化を試みた。その結果、複数の癌抗原に特異的なT細胞ラインを複数のドナーから樹立する事に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、凍結保存した単球からのCD14ML作成はやや困難である。また、以前に比べると大幅に改善されてはいるものの、細胞ドナーによって作成効率に大きな違いがある。この技術を癌免疫療法において使用するべく実用化するためには、 このよう問題を解決するべく、CD14MLの作成方法を改善する必要がある。今年度は、この問題に取組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度も継続して研究を実施する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
CD14MLの作成手法の改善及び論文作成を行なう。
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