研究課題
挑戦的萌芽研究
ゲノムワイドなshRNAを発現するレンチウイルスライブラリーを用いたスクリーニング系を確立するために、ヒト大腸がん細胞を用いて条件設定を行った。これまでに解析を行った各種ヒトがん細胞に加えて、新たにヒト大腸がん細胞株を用いて、TACC3を標的とするsiRNAをトランスフェクションにより導入し、イムノブロットにより遺伝子枯渇を評価した。次に細胞増殖を検討し、TACC3たんぱく質の枯渇により、細胞増殖が著しく低下するヒト大腸がん細胞を見いだした。平成25年度は、それぞれ8000クローンを含む10種類のサブプールからなるshRNAライブラリーを感染させ、10個の感染細胞プールを作製した。コンディショナルノックアウトマウスからオルガノイドの樹立を行った。誘導的遺伝子破壊には、R26CreERT2アリルを用いた。Tacc3遺伝子変異にはTacc3コンディショナルアリル(Tacc3S/S)、Apc遺伝子変異導入にはApcコンディショナルアリル(ApcS/S)を用いた。遺伝子型の差によらないオルガノイドの形質の違いを考慮し、すでに樹立したオルガノイドに加えて、複数のTacc3W/W, ApcS/S, R26CreERT2およびTacc3S/S, ApcS/S, R26CreERT2という遺伝子型を持つマウスから、消化管オルガノイドを作製し、その特性を明らかにした。その結果、これらのオルガノイドは、クリプトー絨毛構造をもち、吸収上皮細胞に加え、パネート細胞、ゴブレット細胞などの細胞種を有していた。in vitroで4OHTを添加したところ、前者では増殖が促進したのに対し、後者では、増殖が低下した。また、Apc遺伝子欠損オルガノイドでは、Tacc3欠損により細胞分裂停止もしくは遅延が生じることが明らかになった。平成25年度は、これらのオルガノイドを用いて、Apc遺伝子単独欠損およびApc・Tacc3同時欠損後のmRNAを調整し、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析に着手した。
2: おおむね順調に進展している
TACC3枯渇により増殖停止を誘導するヒト大腸がん細胞の同定、および、ヒト大腸がん細胞を用いたゲノムワイドなshRNAを発現するレンチウイルスライブラリーを用いたスクリーニング系の設定は、平成25年度の研究実施計画に従い、順調に達成された。複数のTacc3W/W, ApcS/S,CreERT2およびTacc3S/S, ApcS/S, CreERT2オルガノイドの樹立に成功し、継続的な培養を行うことにより、これらのオルガノイドが、長期にわたり安定して生体を反映した組織構築が維持され、かつ増殖・分化が継続することが確認された。さらに、4OHTを培地に添加することにより、効率的にTacc3を欠損させることができ、その結果、オルガノイドの増殖は著しく抑制されることが再現性よく示された。これらの結果から、作製されたオルガノイドはshRNAスクリーニングに有用であり、実施計画に従って研究を推進することが可能であると考えられる。また、平成25年度に計画されたマイクロアレイによる網羅的発現遺伝子解析にも着手している。
当初の研究実施計画に沿って、順調に進展しており、今後は、ゲノムワイドなshRNAを発現するオルガノイドプールの取得を行う。具体的には、蛍光タンパク質もしくは薬剤耐性を選択マーカーとするレンチウイルスを用いて、オルガノイドの効率的な感染法を確立し、その方法を用いて、各8000クローンのウイルスからなるプールを感染させ、10個の感染オルガノイドプールを取得する。平成26年度は、本研究課題で樹立された各種オルガノイドの網羅的遺伝子発現解析を進める。具体的には、Tacc3WW, ApcSS, R26CreERT2およびTacc3SS, ApcSS, R26CreERT2の遺伝子型を持つオルガノイドを用いて、それぞれの4OHTによる遺伝子改変前後でのマイクロアレイによる遺伝子発現データーの取得と解析を行う。
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Oncogene
巻: Epub ahead of print ページ: 1-11
10.1038/onc.2013.382.