研究課題
大腸がん細胞に感染させたゲノムワイドなshRNAレンチウイルスプールの中から得られた、Tacc3枯渇に対して抵抗性を示した1プールについては、Tacc3枯渇に対する反応性についての再現性が確認された。しかし、コントロールsiRNAに対しても有意な抵抗性を示たことから、目的以外の細胞の混在が示唆された。消化管オルガノイドを用いた解析では、EGFPを指標とした単一のレンチウイルスを用いた条件検討により作製した高効率の感染プロトコルを作製したが、8000クローンから構成されるレンチウイルスプールの感染にはさらなる至適化が必要であると考えられた。Apc cKOから樹立したオルガノイドのApc遺伝子不活化により生じる消化管幹細胞マーカーの発現亢進は、幹細胞集団の増殖により生じた現象であることが、蛍光免疫組織染色で明らかになった。Apc不活化と同時にTacc3遺伝子を欠損させると、明らかな増殖抑制が生じたが、Tacc3遺伝子の単独欠損では観察されないことから、Tacc3はApc欠損細胞特異的に必須の機能を持つ事が示唆された。さらに、Apc/Tacc3二重欠損オルガノイドのマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析では、Tacc3欠損が、Apc遺伝子不活化により生じる幹細胞マーカーの発現亢進を顕著に低下させること、この低下は、Apc変異幹細胞の異常増殖を抑制することにより生じる事が明らかになった。qPCRを用いて各種幹細胞マーカーの変動を個別に検討したところ、それぞれのマーカーにより抑制の程度が異なり、Lgr5の発現は特に強く抑制されていた。Lgr5陽性幹細胞の選択的抑制は、遺伝子改変マウスを用いた解析でも確認されている。これらの結果は、Tacc3欠損が、複数の幹細胞の中でもLgr5陽性細胞を選択的に抑制する事を示しており、がん幹細胞を標的としたがん治療法開発への応用が期待される。
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Oncogene
巻: Epub ahead of print ページ: 1-11
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