研究課題/領域番号 |
25640095
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
向井 英史 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 基礎科学特別研究員 (60570885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌治療 / 遺伝子改変細菌 / 抗癌タンパク / 腫瘍環境応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子改変による機能化が容易で、タンパク質の大量産生に適している細菌類に、抗癌タンパク産生システムをパッケージングし、治療用細菌マシンへ改造する、癌治療用細菌マシン構築戦略のProof of Conceptの取得を目的としている。具体的には、タンパク質の大量分泌産生能が報告されているが、細菌治療を目的に研究されたことの無い全く新しい細菌種である、ブレビバチルス菌を第一選択の宿主細菌として研究を進めている。前年度、TNF-alpha感受性L929担癌マウスに対するTNF-alpha分泌型ブレビバチルス菌による抗腫瘍効果を実証した。平成26年度は、ブレビバチルス菌の安全性に関する検証として、尾静脈内投与後のALT, AST, BUN, クレアチニンなどの血中バイオマーカーアッセイ、および、組織化学的な評価を行い、顕著な組織傷害を引き起こさないことを確認した。前年度の抗腫瘍効果に関する結果と併せて考えると、ブレビバチルス菌は生体内抗癌タンパク産生装置として有用であることが強く示唆された。一方、光イメージングを用いた検討で、ブレビバチルス菌が腫瘍組織内で長期間生育出来ないことが明らかとなった。そこで、静脈内投与による癌組織選択的抗癌タンパク産生を目的として、嫌気性菌である大腸菌に焦点を当て、その生体内生育能について、担癌マウスに投与した後光イメージング実験により評価した。投与2日後には腫瘍選択的に発光が観察され、その後細菌数は減少するものの、再び1~2週間後に掛けて増加を示すことが明らかとなった。そこで、大腸菌を宿主とする癌治療用細菌マシンの有用性について検討を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一目的であった、ブレビバチルス菌の生体内抗癌タンパク産生装置としての有用性について、抗がん効果を誘導し得る高いタンパク産生能や組織傷害を惹起しないことなどの観点から示すことが出来た。既に、これらの成果に関して国際学会での口頭発表を含む学会発表を行っており、原著論文を投稿準備中である。以上のことより、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
別種のサイトカインを分泌する細菌マシンや大腸菌を宿主とする細菌マシンの抗腫瘍効果の評価と、学術雑誌への発表を次年度に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に有効性を確認した腫瘍局所投与に加えて、平成26年度に、遺伝子改変細菌の静脈内投与によるがん治療の検証を行い、その結果を含めて学術論文において発表する予定であったが、予備検討において静脈内投与では選択したサイトカインで十分な抗腫瘍効果が認められなかったため、計画を変更し新たに別のサイトカインを産生する細菌や大腸菌を宿主とする細菌マシンを作製し評価することとした。そのため、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、別種のサイトカインを分泌産生する細菌マシンや大腸菌を宿主とする細菌マシンの抗腫瘍効果の評価と、学術雑誌への発表を平成27年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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