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2014 年度 実施状況報告書

新概念「ヒストンマルチ化学修飾酵素による転写制御」の提唱

研究課題

研究課題/領域番号 25640098
研究機関東京大学

研究代表者

稲垣 毅  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (10507825)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードエピゲノム / JMJD1A / SIN3A / ヒストン脱アセチル化
研究実績の概要

JmjCドメインをもつタンパク質群はヒストンの脱メチル化を惹き起こして転写制御に関わる。しかしながら、これらのJmjCドメインを持つタンパク質群がどのような分子機構で転写を特異的に調節しているのかについては不明な点が多い。そのため、JmjCを持つタンパク質群がヒストン脱メチル化以外の作用を持つことで特異性を発揮する可能性を考慮し、複数の(マルチな)働きを検討した。JmjCドメインを持つJMJD1Aがヒストン脱メチル化酵素としての働きを持つ可能性と機序について検討するためにJMJD1Aのプロテオミクス解析を行ったところ、JMJD1AがHela細胞においてSIN3A、ARID4AといったSIN3A複合体を形成していたことから、JMJD1Aノックアウトマウスから作製したマウス胎児繊維芽細胞から核抽出液と、不死化したマウス胎児繊維芽細胞をもちいてヒストン脱アセチル化活性を検討した。その結果、JMJD1Aノックアウトマウス由来のマウス胎児繊維芽細胞からの核抽出液および不死化したマウス胎児繊維芽細胞において、ヒストン脱アセチル化活性が20-30%増強していた。このことから、内因性のJMJD1Aがヒストン脱アセチル化活性を抑制していることが明らかになった。一方、褐色脂肪細胞系においては、JMJD1Aがイソプロテレノール刺激によってリン酸化を受けることでクロマチン再構成複合体と結合し、ChIPシークエンスと3Cアッセイの結果、エンハンサーとプロモーターの近接関係を制御することで転写を制御する機構が示された。これらの結果から、JMJD1Aがヒストン脱メチル化を介する以外の複数の遺伝子発現制御機構を担うことが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初想定していたJmjCドメインを持つヒストン脱メチル化酵素のマルチな作用について、JMJD1Aを用いて明らかにすることが出来てきている。JMJD1Aが複合体を形成することで、クロマチン構造を変化させて転写制御に関与する機構や、ヒストン脱アセチル化酵素と結合して複数のヒストン修飾に関与することを示すデータが得られており、順調に進展していると評価する。

今後の研究の推進方策

JMJD1Aに注目して、ヒストン脱メチル化制御を伴わない遺伝子発現制御機構について検討する。細胞の外部環境に従ってJMJD1Aの複合体が変化することで作用の特異性が決定されている可能性について検討するため、引き続きプロテオミクス解析を行うとともに、ChIPシークエンス法、ChIP-PCR法を用いて標的遺伝子の同定、転写への影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度予定していたChIPシークエンスの一部を次年度に行うこととした。

次年度使用額の使用計画

ChIPシークエンス用の試薬として使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] JMJD1A is a signal-sensing scaffold that regulates acute chromatin dynamics via SWI/SNF association for thermogenesis2015

    • 著者名/発表者名
      Abe Y., Rozqie R., Matsumura Y., Kawamura T., Nakaki R., Tsurutani Y., Tanimura-Inagaki K., Shiono A., Magoori K., Nakamura K., Ogi S., Kajimura S., Kimura H., Tanaka T., Fukami K., Osborne T.F., Kodama T., Aburatani H., Inagaki T.*, Sakai J.* (*Corresponding author)
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 7;6 ページ: 7052

    • DOI

      10.1038/ncomms8052

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The FBXL10/KDM2B scaffolding protein associates with novel polycomb repressive complex-1 to regulate adipogenesis2015

    • 著者名/発表者名
      Inagaki T.*, Iwasaki S., Matsumura Y., Kawamura T., Tanaka T., Abe Y., Yamasaki A., Tsurutani Y., Yoshida A., Chikaoka Y., Nakamura K., Magoori K., Nakaki R., Osborne T.F., Fukami K., Aburatani H., Kodama T., Sakai J.* (*Corresponding author)
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 290(7) ページ: 4163-77

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.626929

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PPAR beta/delta activation of CD300a controls intestinal immunity2014

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T., Tahara-Hanaoka S., Nabekura T., Ikeda K., Jiang S., Tsutsumi S., Inagaki T., Magoori K., Higurashi T., Takahashi H., Tachibana K., Tsurutani Y., Raza S., Anai M., Minami T., Wada Y., Yokote K., Doi T., Hamakubo T., Auwerx J., Gonzalez F.J., Nakajima A., Aburatani H., Naito M., Shibuya A., Kodama T., Sakai J.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 24;4:5412 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1038/srep05412

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脂肪細胞における新規エピゲノム制御機構2015

    • 著者名/発表者名
      稲垣毅、阿部陽平、Rozqie Royhan、松村欣宏、川村猛、仲木竜、鶴谷悠也、谷村恭子、田中十志也、児玉龍彦、油谷浩幸、酒井寿郎
    • 学会等名
      第52回日本臨床分子医学会学術集会
    • 発表場所
      京都みやこめっせ
    • 年月日
      2015-04-11
    • 招待講演
  • [学会発表] FBXL10によるエピゲノム複合体を介した脂肪細胞分化調節機構2014

    • 著者名/発表者名
      稲垣 毅、岩崎 聡、松村欣宏、川村 猛、阿部陽平、吉田文乃、中村加奈子、馬郡健太、仲木 竜、田中十志也、児玉龍彦、油谷浩幸、酒井寿郎
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会 (ワークショップ)
    • 発表場所
      横浜市パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25
  • [学会発表] エネルギー代謝を制御するJMJD1Aによる新規のエピゲノム制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      稲垣 毅
    • 学会等名
      第14回 Islet Biology 研究会
    • 発表場所
      東京都千代田区都市センター
    • 年月日
      2014-08-02
    • 招待講演
  • [学会発表] JMJDIA Regulates Metabolic Gene Expression by Mediating Long-Range Genomic Interactions in Response to β-Adrenergic Stimulation2014

    • 著者名/発表者名
      稲垣 毅
    • 学会等名
      第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会 (English session)
    • 発表場所
      東京都新宿区京王プラザホテル
    • 年月日
      2014-07-11
    • 招待講演
  • [備考] 稲垣毅 東京大学代謝医学分野酒井研究室

    • URL

      http://www.mm.rcast.u-tokyo.ac.jp/member/inagaki.html

  • [備考] 東京大学先端科学技術研究センター 研究者プロフィール

    • URL

      http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/people/staff-inagaki_takeshi.html

  • [備考] LSBM 稲垣毅

    • URL

      http://www.lsbm.org/staff/inagaki.html

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公開日: 2016-05-27  

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