高等植物のミトコンドリアと葉緑体は、核との複雑な相互作用を通じて細胞内の重要な機能に深く関わっている。本研究では、ミトコンドリアゲノムの進化的安定性を検証するため、異種の細胞質と核を組合わせて育成され60世代以上にわたって維持されてきたパンコムギの細胞質置換系統とその細胞質提供親を用いてオルガネラDNAに変異が生じているかどうか検証した。その結果、ミトコンドリア、葉緑体ともに細胞質置換系統と細胞質提供親系統の間にちがいが見られず進化的安定性が高いと推定された。一方、ミトコンドリアゲノム内では反復配列を介して分子内組換えが生じており、その頻度は組織や成長段階によって異なることが判明した。
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