研究課題/領域番号 |
25640107
|
研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
小西 裕之 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20344335)
|
研究分担者 |
細川 好孝 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60229193)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ゲノム編集 / アデノ随伴ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
遺伝子改変に用いるターゲッティングベクターは、通常、薬剤選択により遺伝子改変細胞を濃縮するための薬剤耐性遺伝子を持つ。この薬剤耐性遺伝子は上流に設置したプロモーターによって発現されることが多い。本研究の実施中、アデノ随伴ウイルスの骨格を持つターゲッティングベクター(AAV-TV)において、薬剤耐性遺伝子を制御するプロモーターの種類により遺伝子改変効率が異なることを見出した。そこで本年度は、高効率に遺伝子改変を行いうるプロモーターの選定を行った。 まず6種類の構成的プロモーターをそれぞれAAV-TV内でEGFP遺伝子の上流に挿入し、複数のヒト細胞株に一過性および安定的に導入して各プロモーターの転写活性を蛍光強度の定量により評価した。また、EGFPの代わりにCDKN2A遺伝子を各プロモーターの下流に連結し、細胞内での同遺伝子の発現を定量的RT-PCRで評価した。さらに、ネオマイシン耐性遺伝子を各プロモーターの下流に連結して細胞株に導入し、出現したG418耐性細胞コロニーの個数に基づいてプロモーター活性を評価した。 次に、ネオマイシン耐性遺伝子がそれぞれのプロモーターに制御されるAAV-TVを用いて複数のヒト細胞株のPIGA遺伝子を改変し、その効率を定量した。また、ハイグロマイシン耐性遺伝子とEGFPの融合遺伝子を細胞ゲノムに挿入したアッセイ系を用いて、各プロモーターを持つAAV-TVの遺伝子改変効率を定量した。各プロモーターの転写活性とAAV-TVによる遺伝子改変効率を比較した結果、転写活性の強いプロモーターにより薬剤耐性遺伝子が制御されるAAV-TVは遺伝子改変効率が低い傾向が認められた。この結果は、今後AAV-TVの構成要素を最適化し、高効率で特異性の高いゲノム編集法を開発するにあたり有用な情報を与えるものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AAV-TV内で薬剤耐性遺伝子を制御するプロモーターの種類により遺伝子改変効率が異なることを見出した。また、遺伝子改変効率がプロモーターの転写活性と逆相関する傾向があることを体系的解析によって示し、PLOS ONE誌に発表した。以上より、本研究ではこれまでに一定の研究成果が上がっており、高い効率と特異性を両立するゲノム編集法の開発に向けて着実に漸進しつつあるものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度、スプライスアクセプター、2A、蛍光遺伝子からなるネガティブ選択カセットをAAV-TVの5’側末端に挿入して細胞に導入し、フローサイトーメトリー(FCM)による蛍光シグナルの検出および遺伝子改変効率の検討を行った。しかしネガティブ選択カセットに由来する蛍光シグナルは導入後一過性にのみ検出され、同シグナルに基づいたソーティングによる遺伝子改変細胞の濃縮効果は限定的であった。そこで今後、ポジティブ選択をG418ではなくピューロマイシンにより行うこととし、短期間の薬剤選択後にFCMソーティングを行い、ネガティブ選択カセットによる遺伝子改変細胞の濃縮効果を検討する予定である。 また、ポジティブ選択カセットとネガティブ選択カセットの両方に蛍光遺伝子を用いてAAV-TVを構築し、遺伝子改変効率を計測する。両選択カセットともにプロモータートラップ型とし、一過性導入の段階の細胞が蛍光陽性となることを回避する。このようなベクターデザインにより薬剤選択は不要となり、ベクターが細胞に安定導入された直後、すなわち感染数日後からFCMによる遺伝子改変細胞の単離が可能になる。これにより、AAV-TVによる高効率で簡略化・迅速化された遺伝子改変の成立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度、AAV-TVに導入したネガティブ選択カセットの機能が一時的であったため、同カセットによる遺伝子改変細胞の濃縮効果は限定的であった。本年度は、AAV-TVに内含されるプロモーターの種類により遺伝子改変効率に違いがあることを見出したため、高効率な遺伝子改変を達成しうるプロモーターを選定するための解析を行い、その結果を論文発表した。そのため、ネガティブ選択カセットが機能する条件下でのAAV-TVによる遺伝子改変効率の評価、およびポジティブ選択カセットとネガティブ選択カセットの両方に蛍光遺伝子を持つAAV-TVの遺伝子改変効率の検討は次年度に行う方針とした。これらの実験に利用する助成金の配分は次年度使用額として平成27年度に移行させることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、薬剤選択を短期間に行いうるAAV-TVを用いた、ネガティブ選択カセットが機能する条件下での遺伝子改変効率の評価を行う。また、ポジティブ選択カセットとネガティブ選択カセットの両方に蛍光遺伝子を用いたAAV-TVについても遺伝子改変効率の評価を行う。次年度使用額はこれらの実験の経費に充てる。
|