アデノ随伴ウイルスの骨格を利用したターゲッティングベクター(AAV-TV)による遺伝子改変の効率向上を図るため、2A配列に基づくプロモータートラップ・システムによってポジティブ選択用の薬剤耐性遺伝子が制御されるAAV-TVを試作した。2AはThosea asignaウイルスのものを使用し、薬剤耐性遺伝子にはNeomycin phosphotransferase遺伝子を使用した。このAAV-TVによる遺伝子改変の効率を、内部リボソーム進入部位(IRES)に基づくプロモータートラップ・システムを搭載するAAV-TVと比較した。その結果、2Aプロモータートラップ法による遺伝子改変の効率は、2つの指標(相同組換え・ランダム挿入比、およびabsolute gene targeting frequency)のいずれにおいてもIRESプロモータートラップ法に比べて高値を示した。この実験結果は、2種類のアッセイ系(ハイグロマイシン耐性遺伝子とEGFPとの融合遺伝子における欠損修復のアッセイ系、ならびに内在性PIGA遺伝子破壊のアッセイ系)の両方で確認された。 一方、CRISPR-Cas9システムを用いて導入したゲノムDNA二重鎖切断における相同組換え修復の効率に関しては、ターゲッティングベクターに搭載された2Aプロモータートラップ・システムは、IRESプロモータートラップ・システムよりも高いabsolute gene targeting frequencyを誘導したが、相同組換え・ランダム挿入比の有意な改善はもたらさなかった。 研究代表者らの知る限り、これまでターゲッティングベクターにおけるIRESと2Aのプロモータートラップ機能を体系的に比較検討した報告はなく、当研究が初めてと思われる。また、AAV-TVにおいて2Aプロモータートラップ法を使用した報告も当研究が初めてと考えられる。
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