研究課題/領域番号 |
25640111
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
本田 信治 福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (90632167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エピジェネティク |
研究概要 |
アカパンカビにおいて目的蛋白質と相互作用する蛋白質を網羅的に同定する方法(Honda & Selker, Genetics, 2009)を改良し、セントロメア領域に付随する蛋白質を網羅的に同定する方法を開発した。そこで、長年のヘテロクロマチン研究で蓄積した種々の欠損株の利点を活かし、DNAメチル化欠損株、H3K9メチル化欠損株、常ヒストン高アセチル化株、そして、それぞれの組合せ株を用いることで、人為的に生体内で様々な組合せのエピジェネティクス修飾をもつセントロメア状態に改変させた。そして、それぞれに改変させたセントロメアに付随する蛋白質を網羅的に同定することで、特定エピジェネティクス修飾認識蛋白質群として分類解析を行った。その結果、興味深いことにDMM-1とDMM-2を正常株やH3K9メチル化欠損株で検出することはできなかったが、DNAメチル化欠損株や常ヒストン高アセチル化株において検出することに成功した。更にその組合せにより、より強く検出することを見出した。しかし、本解析は相対的定量も同時に行う手法でないため、この問題を対処するために安定同位体を組合せる質量分析解析するSILAC法をアカパンカビに応用する試みを行った。まだ開発段階であるが、canonicalヒストンH2AとvariantヒストンH2AZがセントロメア領域のエピジェネティクス修飾の違いによって大きく分布変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り実験を遂行し、更なる技術開発を進めているため。
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今後の研究の推進方策 |
上記のSILAC法の改良を進める。そして、精製した蛋白質複合体が同一の機能を有するのか、そしてこの複合体により、修飾の組合せがどのように認識されているのか、更に新規修飾結合ドメインがあるかを下記の項目の順に解析する。 ① 蛋白質複合体を形成すると思われるそれぞれの蛋白質にエピトープタグ(FLAG、HA、Myc、V5、GFP)を付加し(Honda & Selker, Genetics, 2009)、これらのタグを利用した免疫沈降法により実際にそれぞれの蛋白質が相互作用しているかを確認する。 ② 上記のタグ化した蛋白質を用いてChIP-seq(クロマチン免疫沈降法の後に、次世代シークエンス解析)により、ゲノムレベルで実際にそれぞれの複合体を形成する蛋白質が予想する領域に局在しているのかを調べる。 ③ 複合体を形成する蛋白質に対するそれぞれの欠損株を作製し、同じ表現系を持つかを調べることにより、これらの蛋白質が機能的にも連携しているかを確認する。 ④ それぞれの蛋白質のエピジェネティクス修飾を認識するのに重要なアミノ酸部位をsite-direct mutagenesis法により変異させた株を作製し、上記と同じ方法により:(a) 蛋白質間相互作用が変異により変化するか? (b) ゲノム上の局在が変異により変化するのか? (c) この変異により同様な表現系をもつのか? を調べる。そしてこれらの結果を総合的に解釈し、暗号解読の分子機構を推定する。 ⑤ 既知ドメインでは説明できず、新規の修飾結合ドメインによるものと考えられる場合は、(a) 種間で保存されたアミノ酸配列領域があるか? (b) 生体内にその領域を欠損させた蛋白質はゲノム上の局在を失うか? (c) そのドメインを有する組換え蛋白質を作製し、実際にその修飾に結合するか? を調べる。更に他の種にも新規ドメインが保存されているかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の実支出額の遂行率(99.7%)から、予算使用計画の通りに行われている。 当初の予算使用計画の通りに行う。
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