研究実績の概要 |
アカパンカビにおいて目的蛋白質と相互作用する蛋白質を網羅的に同定する方法(Honda & Selker, Genetics, 2009)を改良し、セントロメア領域に付随する蛋白質を網羅的に同定する方法を開発した。そして、H3K9メチル化に特異的に結合する新規蛋白質を同定し、この蛋白質がヘテロクロマチン領域に局在し、セントロメアのサイレンシングを担うことを確認した。同様に、DMM複合体(Honda et al, Genes Dev, 2010)がDNAメチル化されておらず、高アセチル化されたセントロメア領域に強く局在し、更にH3K9メチル化がなくなると局在しなくなることを見出した。そこで、酵母Two-Hybrid法で複合体間の相互作用部位を特定した。更に、ペプチドアッセイによりDMM複合体がH3K9メチル化とH3R2メチル化に結合する知見を得た。 また、セントロメア領域以外の領域で同手法の有効性を調べるために、セントロメア領域の次に大きなヘテロクロマチン領域であるテロメア領域に着目した。そこで、テロメアのキャッピングに重要な蛋白質複合体Shelterinをアカパンカビで同定した。そしてChIP-seqにより、その構成蛋白質がテロメアに特異的に局在し、このテロメア局在がヘテロクロマチン化に重要なH3K9メチル化に依存しないことを確認した。そして上記と同様な手法を用いて、テロメア領域に付随する蛋白質を網羅的に同定した。その結果、セントロメアとテロメアに共通して付随する蛋白質郡、それぞれに特異的な蛋白質群に分類することに成功した。 これらの結果から、本手法は領域内外のエピジェネティクス修飾を暗号解読する蛋白質複合体の網羅的解析に有効である。
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