本研究では、真核細胞内の各コンパートメントにタンパク質を過剰にした時に生じる負荷(これを本研究では「プロセス負荷」とよぶ)の原理を明らかにすることを目的とする。プロセス負荷は、申請者らが独自に開発した遺伝子つなひき(gTOW)法を用いて、局在化させたGFPの過剰発現の限界を測定することではじめて生まれた概念である。本研究では、プロセス負荷の生じた酵母細胞の生理応答をオミックス解析によりあきらかにし、復帰変異や多コピー抑圧遺伝子の解析により細胞システムがどのようにプロセス負荷を回避するのかを明らかにする。本研究により、真核細胞における「プロセス負荷」の実体が明らかとなりその概念が確立する。H25年度は、GFPならびにTEVプロテアーゼをモデルタンパク質として、さまざまな局在化シグナルを付加し、これらの過剰発現の限界を測定するとともに、過剰発現を起こしている細胞の生理状態をタイムラプス顕微鏡観察や転写解析によりあきらかにした。その結果、いくつかの局在化シグナルをもつタンパク質は細胞周期や細胞形態の異常を引き起こすことが明らかとなった。H26年度は、さまざまな局在シグナルを付加したGFPの過剰発現が生むプロセス負荷を回避させる多コピー抑圧遺伝子の同定を行い、プロセス負荷の実態解明を進めた。また局在化シグナルをもつGFPが過剰になった時に細胞内でどのような構造を取るかを解析した。これらの結果をまとめて現在論文を投稿中である。
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