研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、絶滅危惧種を対象にまず培養細胞の樹立を試みた。本研究では絶滅危惧種に指定されている爬虫類特にウミガメ類に関して培養を行った。我々はアカウミガメおよびヒメウミガメの皮膚組織を採取し、初代培養を行った。その結果、アカウミガメおよびヒメウミガメの初代培養細胞の樹立に成功した。ヒメウミガメでは過去に我々が樹立したRPMI1640培地によって樹立が可能となったが、アカウミガメでは同培地での生育は比較的良くなかった。しかしアカウミガメの場合、アカウミガメはDMEM/F12の混合培地によって効率よく生育することが明らかになった。加えてヒメウミガメの培養細胞を用いて核型解析を行った。染色体標本を作成する上で、染色体数の誤差が検出されたが、合計で分裂体を50以上カウントした結果、2n=56にピークが認められ、本種が2n=56の核型を持つことを明らかにした。加えてヒメウミガメの場合、凍結組織からの初代培養を試みた。採取後1日の段階で、細胞凍結用不凍液に組織を浸漬した。その条件で細胞凍結用に用意された器具によって緩徐冷却をおこなった。その後液体窒素中で約6ヶ月保存を行った。6ヶ月後に通常の培養細胞と同様に解凍し、初代培養を行った所、初代培養細胞を得ることに成功した。このことはサンプリングフィールドと研究室が離れ、サンプリング後に長距離を長時間の輸送が必要になった場合、凍結状態で安定的な輸送が可能になることを意味する。今後はアカウミガメの核型解析を行なうと同時に、細胞への遺伝子導入を行うための基礎検討を開始する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定では、初年度に細胞を採取し、初代培養のみを行う予定であったが核型解析にまで進展することが出来た。加えてその研究成果を国際英文論文として迅速に投稿し、受理を受けるまでに至った。当初の計画より大きく進展していると結論した。
今後はアカウミガメの核型解析を行なうと同時に、細胞への遺伝子導入を行うための基礎検討を開始する予定である。遺伝子導入を行う方法としては、組み換えウィルス、リポフェクション、電気穿孔法の3種類が存在する。どの方法が最も適しているか、検討を行う予定である。
希少動物のからの培養細胞の樹立のための条件検討であるが、ウミガメ類は予想されるよりも簡単な組成の培地にて初代培養が可能となったが、その他の希少種に関しては、思ったよりも増殖因子を含めた培地にて条件検討が必要であることが判明した。線維芽細胞増殖因子(FGF)および上皮細胞増殖因子(EGF), PDGF(血小板増殖因子)などを使用して培養条件の最適化を次年度に行う予定である。これらの増殖因子は大変高価で経費が必要であるために、繰り越しの必要が生じた。希少種の初代培養に、線維芽細胞増殖因子(FGF)および上皮細胞増殖因子(EGF), PDGF(血小板増殖因子)などを使用して培養条件の最適化を次年度に行う予定である。これらの増殖因子の購入に経費を使用する。
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In Vitro Cellular & Developmental Biology -Animal
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