研究課題/領域番号 |
25640117
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 智一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40321640)
|
研究分担者 |
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 絶滅危惧動物 / 培養細胞 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
我々は絶滅危惧動物の一種であるアカウミガメを対象に昨年度に初代培養に成功した。アカウミガメはタイマイとは異なる培地条件を必要とすること、タイマイと同じ26℃にて安定的に生育することを明らかにした。本年度はアカウミガメの細胞へ効率よく遺伝子導入するための基礎条件を検討した。導入にはレンチウィルスおよびレトロウィルスを使用した。EGFP(蛍光タンパク質)を使用した実験において26℃で感染を行った場合は、数パーセントの細胞にしか遺伝子導入できないが、ウィルス感染時に一過性に37℃で培養することにより80%を超える遺伝子導入が可能になることを見出した。この条件を元に、変異型CDK4 (Cyclin Dependent Kinase 4), Cyclin D, TERT(テロメラーゼ酵素サブユニット)を導入し無限分裂細胞の樹立を試みる予定である。我々の過去の研究によって変異型CDK4, Cyclin D, TERTの導入によって幅広い動物種の細胞を染色体パターンに変化を及ぼさず、元の細胞の性質を比較的保持したまま無限分裂に導くことができることが判明している。細胞周期の調節遺伝子群の構造は幅広い動物種において保存されており、爬虫類においても無限分裂細胞を誘導できる可能性がある。爬虫類において今まで無限分裂細胞の樹立の報告は全く例がなく、高い学術的価値をもつものと考えられる。 また我々は組織を不凍液に浸漬することによって、6ヶ月以上冷凍保存した組織から初代培養細胞を得ることに成功した。本成果によって冷凍保存した組織であっても不凍液に保存すれば初代培養のための材料として利用出来ることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予想した以上に遺伝子導入の効率が高く、無限分裂細胞を誘導するために遺伝子発現構築を改変する必要がなくなった。哺乳類細胞で行っていたようにそれぞれの単一遺伝子を発現する組み換えウィルスを混合して無限分裂細胞を樹立することが可能となった。高い遺伝子導入効率が可能になった理由は、一過性に37℃に培養温度を上げ組み換えウィルスを感染させる工夫を行ったためである。組み換えウィルスの酵素が多くの哺乳類に最適化されているために、効率良い感染には37℃の温度が必要であったと考えられた。これらの研究成果からおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
アカウミガメの対象に変異型CDK4, Cyclin D, TERTを発現する細胞を樹立する。樹立した細胞において導入した遺伝子が発現していることを検出し、さらに細胞生化学的解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は遺伝子構築を再設計する必要が予想されたが、細胞への遺伝子導入の効率が予想より高かったために遺伝子構築の再設計の必要がなくなった。さらに樹立した細胞について解析を進める予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
樹立される細胞で最も必要とする染色体解析を行う。ウミガメは哺乳動物と比較して染色体数が多いため高い解析技術を必要とする。このため染色体解析を専門とする会社へ依頼する予定である。培養を継続して行うことが必要であるので、引き続き培養細胞用血清、培地、培養用ディッシュなどに使用する予定である。
|