今後の研究の推進方策 |
1. 分離された細菌の細菌学的特徴の解明:平成25年度に分離した細菌株の系統解析を行う。細胞外分泌物の有無により,細菌の生理・代謝が異なるか,明らかにする。 2. 細胞外分泌物を含む平板寒天培地にて集落形成能を有する細菌の分離・培養:平成25年度に引き続き,細胞外分泌物を含む平板寒天培地上にて集落形成能を有する細菌株を分離・培養する。平成25年度は培地の固化剤として寒天を用いたが,平成26年度はgellangumまたは,セルロースプレートに浸潤させて作成した固形培地も用いることを検討する。 3. 細胞外分泌物で集積培養される細菌群の探索:二槽培養器を用いた実験においては,対象とする細菌群集の数を増やし,細胞外分泌物で集積される細菌群を探索する。また,用いる原生生物をT. thermophilaに限らず,複数種の原生生物を用いる。細菌群集の種構成を,細菌遺伝子の16SrRNA領域をターゲットとするPCR-DGGE法を用いて解析する。この実験の意義は以下の点にある。すなわち,本研究においてかりに難培養性細菌の分離に成功するに至らないとしても,原生生物との共培養下において特異的に反応する細菌群が存在することを,培養法に依存することなしに示すことができることである。難培養性細菌の分離という当初の目的は達成できなくとも,「食う-食われる」の関係以外の,細菌と原生生物との間のまだ知られていない相互関係を明らかにし,微生物生態学に新たな知見を提供することが期待できる。 4. 細菌の保存方法の検討:分離された細菌は細胞外分泌物を生育に必要とすると想定されるため,細胞外分泌物を含む固形培地,またはグリセロール溶液における凍結保存,あるいは微生物プリザによる乾燥保存が可能か検討する。これらの方法で細菌が保存できない場合には,室温における液体培養や,定期的な植え次ぎを繰り返すことなどの方法も検討する。
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