| 研究課題/領域番号 |
25640119
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| 研究機関 | 東京農工大学 |
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研究代表者 |
金勝 一樹 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60177508)
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| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| キーワード | 種子寿命 / イネ / long-lived RNA / 染色体断片置換系統群 / 遺伝的改良 |
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| 研究実績の概要 |
昨年度はトランスクリプトームおよびプロテオーム的な手法を用いて、種子形成期間に転写されて発芽誘導に必須のイネ胚に存在するlong-lived mRNAの特定に関する解析を行った。また、貯蔵期間が長く発芽能を失った種子では、胚のRNAが分解されていることも明らかにした。それらを踏まえて平成26年度は以下の解析を行った。
1.「日本晴」、「ササニシキ」、「ハバタキ」、「ひとめぼれ」の種子寿命を評価した。その結果、種子寿命には明らかな品種間差があり、「日本晴」や「ササニシキ」と比較して「ハバタキ」と「ひとめぼれ」の種子では長期間発芽能が維持されることが明らかになった。また、これらの種子では発芽能の消失に伴い胚のRNAが分解されていることが示された。
2.「ササニシキ」を遺伝的な背景とした「ハバタキ」の染色体断片置換系統群を用いて種子寿命の解析を行った。その結果、第２、第３、第７染色体の一部がハバタキ型に置換されると、「ササニシキ」よりも有意に種子寿命が長くなることが明らかになった。これらのことは「ハバタキ」の第２、第３、第７染色体領域に種子寿命を制御する遺伝子が座乗していることを示している。またこれらの遺伝子を用いれば、種子寿命の遺伝的改良が可能であることも示唆された。
3.農業生物資源ジーンバンクで配布されている世界のイネコアコレクション69品種の種子寿命を評価した。その結果、ほとんどの系統の種子の発芽能が消失する条件でも、80%以上の発芽率を維持できる品種を複数見出した。これらの品種は、種子寿命を改良するための有用な遺伝資源になると期待される。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの解析で以下のような結果が得られており、順調に研究が進められていると言える。なお、昨年度の成果はJournal of Experimental Botanyに投稿し、掲載されることが決定している。
1.イネ種子の発芽初期のタンパク質合成では、種子形成期間に転写され胚に蓄積しているlong-loved mRNAが用いられることが明らかにされた。
2.様々なイネ品種において、種子寿命の維持に胚のRNAの安定性が重要であることが示された。
3.「ハバタキ」の第２、第３、第７染色体領域に種子寿命の維持機構に関わる遺伝子が座乗することが示された。さらにこれらの遺伝子を用いれば、イネでは種子寿命の遺伝的改良が可能であることが明らかにされた。
4.種子寿命を改善する上で有用な遺伝資源となり得る複数の品種が特定された。
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| 今後の研究の推進方策 |
2015年は本事業の最終年度にあたるので、研究成果のとりまとめを行うとともに、次のステージへ展開させることも念頭に以下の解析を行う。
1.胚のRNAの分解の状況については、電気泳動を行うことで質的に確認してきたが、画像解析を用いて定量的に評価できる方法を確立する。これにより、発芽能の維持と胚のRNAの安定性の関係について客観的な評価を行うことが可能になり、さらにイネ以外の植物の解析にも適用できるようになる。また これまでの解析により、胚に蓄積しているRNAの中で種子の発芽の誘導に必要なものが特定されているので、それらのRNAの安定性に視点をおいた解析を行い、種子寿命を評価する。
2. QTL解析により、「ハバタキ」の第２、第３、第７染色体領域に存在する種子寿命の制御に関わる遺伝子の特定を目指す。そのために染色体断片置換系統群の後代を作出する。
3. 世界のコアコレクションの中で長期間安定して発芽能が維持される系統について、種子寿命を制御する要因についての解析に着手する。またこの解析では、ササニシキ/ハバタキの染色体断片置換系統も有用な実験材料となり得るので、それらも用いる。
4.RNAの安定性にはRNA結合タンパク質が関与する可能性が高いので、シロイヌナズナのRNA結合タンパク質に関する突然変異系統を入手して栽培を開始する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、消耗品の使用額が予算よりオーバーしていたが、3月末に受理された投稿論文の投稿料の支払いが次年度の扱いとなったため、その分の差額が「次年度の使用額」として生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
受理された投稿論文の投稿料の一部として充当する。
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