研究概要 |
(1)BRCA1複合体を作る分子を精製 BRCA1は、停止した複製フォークや2重鎖DNA切断に集合して、シャペロンとして、相同DNA組換えを促進する。2重鎖切断をおこす抗がん治療薬(カンプトテシンおよびエトポシド)で細胞を処理前後に、BRCA1複合体を精製し、複合体の構成因子を質量分析にて同定した。既知の構成因子は、すべて同定できた。その中には、Abraxa, BRCA1, BRCC36, CtIP, Merit40, Rad51, RAP80 が含まれる。したがって、BRCA1複合体精製⇒ 質量分析の実験手法は、最適化できた。カンプトテシンによる2重鎖切断(エトポシドによる2重鎖切断ではなく)は相同組換えによって修復される。よって、カンプトテシン処後の場合の複合体のみに含まれる分子には、新規の相同組換え因子が含まれている可能性がある。そのような分子が、複数個同定でき、その中にはプロテオソーム構成因子があった。 (2)MRE11複合体を作る分子を精製 H25年に実施していない。既知の複合体構成因子(DNA2ヌクレアーゼ)の機能解析を実施した。 (3)A procedure to isolate proteins on nascent DNA(iPOND)をDT40用に最適化 iPONDとは、複製フォークに存在する分子を濃縮精製する手法である。DNA複製を抑制する2mM Hydroxyurea 処理条件下に細胞を培養し、iPONDを野生型細胞とRNF8-/-細胞を比較しながら実施した。野生型細胞のみに濃縮されたタンパク分子は、ATRX, FANCD2-I, NCAPD2, NUSAP1があった。これらの分子は、RNF8ユビキチン化酵素によって制御されながら、 停止した複製フォークの崩壊を防止している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)「平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-1) BRCA1複合体を作る分子を精製する方法を最適化」は、完成した。具体的には、2重鎖切断をおこす抗がん治療薬(カンプトテシンおよびエトポシド)で細胞を処理前後に、BRCA1複合体を精製し、複合体の構成因子を質量分析にて同定した。その結果、既知の構成因子(Abraxa, BRCA1, BRCC36, CtIP, Merit40, Rad51, RAP80)がすべて同定できた。 (2)「平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-2) MRE11複合体を作る分子を精製する方法を最適化」は未だ開始できていない。 (3)平成25年度の研究実施計画」の中の「(1-3) iPOND(A procedure to isolate proteins on nascent DNA)をDT40用に最適化」も実施した。この実験でも、当初予想された分子が、iPONDによって精製できるのが確認できた。 以上まとめると、当初計画した2つの実験:(i) 抗体を使ったタンパク複合体精製とその質量分析。 (ii) iPONDによってタンパクを精製し、それを質量分析する。 は、それぞれの実験条件を最適化できた。よって「おおむね順調に進展している」と結論する。
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