研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、ニワトリBリンパ細胞特異的な相同DNA組換え因子を見つけ、高等真核細胞で標的組換え効率を、現在の手法より1,000倍上昇させることである。既にCRISPR手法が開発され、現在の手法より3桁標的組換え効率が上がり、ヒト細胞や受精卵(マウス、魚等)において遺伝子破壊や遺伝子改変(例、特定の点変異のノックイン)が可能になった。しかし、初代培養細胞やiPS細胞では、CRISPRを使っても遺伝子改変はできない。本研究は、CRISPR手法と併用し、その標的組換え効率をさらに1,000倍上げることにある。可能になれば、体細胞の遺伝子治療に応用できる。 本研究助成が始まる2012年以前に、DT40細胞のトランスクリプトームを調べ、そしてDT40細胞においてSILAC (Stable Isotope Labeling with Amino acids in Cell culture)をタンパク質量分析に応用する実験手法を確立した。2012年以降に実施した実験は、相同組換えタンパクの精製法の開発である。相同組換えは100種類以上のタンパクが関与する複雑な生化学反応であり、相同組換えタンパクを一網打尽に精製する手法はない。精製には、(i)既知の相同組換え因子と結合、(ii)相同組換えを誘導する条件で複製フォーク近くに存在、の2つの原理で可能である。(i)については、既知の相同組換え因子としてBRCA1を選び、そのタンパクと結合することが知られているタンパクが全種類いっしょに精製されてくることを確認した。(ii)についてはiPONDと呼ばれる手法をDT40に応用できた。相同組換えを誘導する条件の代表は、抗がん治療薬(例、PARP阻害薬)の添加であるが、その条件ではiPONDを実施できていない。
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