研究課題/領域番号 |
25650009
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 優子 東京工業大学, 生命理工学研究科, 科学研究費研究員 (70435882)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 細胞内抗体 / ライブイメージング / scFv |
研究実績の概要 |
本研究は、ゲノムDNA上の特定の領域を生細胞で可視化する新しいプローブを開発し、細胞分化過程における特定の遺伝子領域のエピジェネティクス動態を観察することを目的として行っている。 平成26年度は、生細胞中でヒストン修飾動態を計測するための蛍光プローブmintbody(modification-specific intracellular antibody)の作製と、分子構造の解析を試みた。ヒストンH4 Lys20モノメチル化修飾特異的抗体を産生する3種のハイブリドーマ細胞からRNAを抽出し、cDNAを合成して抗体可変領域のscFv(single-chain variable fragment)を取得した。このscFvを、GFP融合型として培養細胞に発現させたところ、3つのうちのひとつ(v1)は核内で標的に特異的に結合したが、他の2つ(v2、v3)は細胞内で安定に発現しなかった。3種の抗体の可変領域のアミノ酸配列を比較したところ、v1とv2の間には5個、v1とv3に間には20個のアミノ酸置換がみつかった。v2のアミノ酸を一つずつv1型に置換する変異を導入して細胞内で安定に発現するかどうか調べたところ、フレームワーク領域内のアラニンがグリシンに置換することで細胞内における安定性が損なわれることがわかった。また、v1のscFvの結晶構造からこの部位はベータバレル構造の一部を構成することが明らかとなった。本研究によりヒストン修飾可視化プローブを細胞内の条件下で安定な構造を保つために必要な構造を解明することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなヒストン修飾特異的蛍光プローブの細胞内発現に成功した。また、細胞内で安定に機能するために必要なアミノ酸残基を同定し、この部位について分子構造学的な考察を加えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
特定のゲノム領域に特異的な蛍光プローブの作製を進める。CRISPR/Cas9システムを用いた可視化系を検討する。またヒストン修飾特異亭蛍光プローブを発現する遺伝子改変マウスを作製し、in vivoイメージング系の構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はゲノムDNA上の特定の領域を可視化する新規プローブを開発し、特定の遺伝子座のエピジェネティクス動態を生体内で観察することを目的として行っている。本計画ではヒストン修飾可視化マウスを使用する予定であるが、今年度は大阪大学から東京工業大学への研究室移設にともなう移動のため、繁殖を停止しなければならなかった。現在、マウスの移動が完了し繁殖を再開したので、次年度に期間を延長することで研究を遂行できる。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒストン修飾特異的プローブmintbodyを発現するマウスを用いて、発生過程におけるヒストン修飾動態を観察する。
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