研究概要 |
核内における染色体の三次元的配置は、DNA繊維の単純な折りたたみだけでなく、核膜局在タンパク質と染色体との相互作用や特定の染色体ドメイン同士の相互作用などによって決定される。このような配置は、転写、DNA複製、DNA修復、染色体分配などの核内反応に大きな影響を及ぼすことが知られている。しかし、その配置を決定するメカニズムについては、全容解明までまだ程遠い状況である。最近、分裂酵母のtRNA遺伝子や5S rRNA遺伝子などのPol III genes の転写に必要なPol III machinery (TFIIICなど)がコンデンシンと相互作用することによって、ゲノム全体に散在する各種tRNAや5S rRNA遺伝子座位の一部をセントロメアに会合させていること、さらにTFIIICがPol III非依存的にPol III genes以外の染色体座位に局在し、それらの座位をnuclear peripheryで会合させていることが示唆された(Noma et al., 2006; Iwasaki et al., 2010)。このような会合は、それらの座位周辺の遺伝子発現やクロマチン状態に影響を与えるだけでなく、M期での染色体凝縮の足場となり、正確でスムーズな染色体分離に必要とされると考えられている。分裂酵母のテロメアDNAにはTaz1タンパク質が直接結合し、さらにRap1タンパク質と相互作用することによって様々なテロメア機能を果たしている。ChIPChip解析によって、Taz1とRap1のゲノムワイドな局在を調べたところ、両者はPol III genesであるtRNAや5S rRNA遺伝子群座位や複製開始点付近に局在する可能性が示唆された。このことは、テロメア結合タンパク質がテロメア維持とは別の機能を有していること、さらに前述のような染色体配置制御機能を有する可能性を示唆している。
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