研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、申請者の独自の発見「Rif1はクロマチンループ構造の形成を介して複製タイミング機能ドメインを規定する」に基づき、Rif1を用いてクロマチンループ構造の人為的改変を介して核内構造を操作し、細胞の機能改変を誘導する新規技法を開発する。Rif1を用いて、染色体の核内配置や高次構築を操作するために、1) 発現レベルを変動することによりゲノム全体のクロマチンループ構造を操作する、2) 部位特異的にクロマチンループを形成し、局所的に染色体機能ドメインを操作する、の二つのアプローチをとる。2)を達成するために、まずRif1タンパク質の機能部位を同定するための実験を行ない下記の結果を得た。(1)マウスRif1タンパクを発現精製しその形状を電子顕微鏡及び、原子間力顕微鏡で観察した。その結果リング状の構造が観察された。(2)中央のIDP(Intrinsically disordered polypeptide)領域を欠失させ蛍光分子に置換えた融合分子を発現した結果、ERを含む細胞内膜画分への局在が観察された。この局在にはC端30aaが必要であった。(3)分裂酵母Rif1も精製し、そのDNA結合能を測定した結果、少なくともゲルシフトやプルダウンアッセイでは塩基配列非特異的に二本鎖DNAへの結合が観察された。(4)また精製された分裂酵母Rif1はオリゴマーを形成していた。(5)分裂酵母においてGal4結合部位を染色体上に導入し、Gal4-Rif1結合タンパク質を発現した。現在局所的な染色体構造の改変が観察されるか検討している。(6)分裂酵母ゲノム上の特定のRif1結合部位を変異により不活性化した。この時に、不活性化されたRif1結合部位のみでなく、遠位にあるテロメア近傍の複製開始も脱抑制した。このことはRif1がクロマチン間の相互作用を仲介する可能性を示唆する。(7) Rif1欠損マウスMEF細胞を不死化し、Rif1誘導体の機能解析の基盤ができた。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、分裂酵母および動物細胞のRif1タンパクを増産精製することに成功し、現在その生化学的解析を行っている。また、分裂酵母においてtetheringし、その染色体構造に対する効果の解析を行うための株の構築をほぼ終了した。巨大タンパクであるので組換えDNAの作製などに高度な技術を要求するが、何とか困難を克服しており、予定通りに研究が進行していると言える。また動物細胞Rif1の解析に必要なRif1欠損MEF細胞も不死化し、使用できるようになったので動物細胞Rif1の機能解析も今後進むものと考えられる。
まず分裂酵母でRif1をゲノム上にtetheringし、染色体の局所構造が変動するかどうかを検討する。同時にこれにより近傍の複製タイミング、遺伝子発現、組換え頻度などが変動するかどうかを検討する。動物細胞においても同様な実験を試みる。まずは機能ドメインの解析から、DNA結合に必要な領域を同定し、それを別のDNA結合ドメインに置換えて、染色体の特定の部位にtetheringする系を確立する。精製した分子の解析は継続し、分子の形態、DNAとの結合の様式などを解明する。
今年度は、本研究成果についての学会での研究発表を控えた事と、研究補助員の雇用をしなかった事のために予定金額が次年度使用となった。次年度、本研究を効率よく推進するために必要な費用として、動物細胞の培養、オリゴDNA合成、遺伝子editing のための試薬、受託研究費用などに使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)
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