研究課題/領域番号 |
25650018
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 桜子 東京大学, 放射光連携研究機構, 助教 (60597152)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / Rab |
研究概要 |
真核生物の細胞内では、多数の膜系小器官が行き来して物質のやり取りを行っている。各膜系の膜表面には、ヒトで70種程ある低分子量GTPase Rabが局在しており、Rabの種類が各膜系のアイデンティティーを示している。GTPaseであるRabは膜上でGTP型へと活性化されると、各膜系に特有の反応を誘導する。Rabは、C末端に翻訳後修飾された脂質基によって膜に局在する。一方で細胞質中では、RabはGDIと呼ばれるタンパク質と結合して可溶性因子として存在している。そこで、Yipファミリータンパク質と呼ばれる膜タンパク質が、Rab-GDI複合体からRabを解離させて膜に挿入する機能を持つと提唱されている。本研究では、基盤上に人工脂質膜を再構築し、その上でYipによるRabの膜挿入機構とRab局在の制御機構を解析することを目指している。人工脂質膜としては、リポソームまたは脂質ナノディスクを用いる。今年度はリポソームを用いる方法を検討した。Yipを埋め込んだリポソームの調製を試みたところ、Yipのリポソームへの取り込み効率が非常に悪く、十分にYipが埋め込まれたリポソームを調製することが困難であった。そこで、リポソームを構成する脂質の種類や割合を検討し、Yipが比較的高濃度でリポソームに取り込まれる条件を見出した。また、この条件においてはYipが非変性膜画分に存在することも確かめた。次に、C末端に脂質基が付加されたRabの調製を行った。これまでは、大腸菌内で大量発現させて精製したRabに、化学合成した脂質基を付加することによって脂質化Rabを調製していたが、脂質基の付加効率が悪かった。そこで調製方法の検討を行い、昆虫細胞内でRabとGDIを共発現させることによって、昆虫細胞に内在している翻訳後修飾機構を用いて、脂質化Rab-GDI複合体を高効率で調製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要因子であるYipを効率良く取り込むリポソームの組成を見出すことに成功した。また、もう一つの重要因子である脂質化Rabを効率良く調製する方法も確立することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は表面プラズモン共鳴法を用いてYipがRabを膜に挿入する機構を解析する。長鎖アルカンが固定化されているセンサーチップにYipを取り込んだリポソームを捕捉する。並行して、別の人工脂質膜系としてナノディスクを用いる方法を検討する。ナノディスクの調製に成功したら、既に確立されている方法によりセンサーチップにナノディスクを固定する。これらのセンサーチップに、Rab-GDI複合体を作用させることにより、YipによるRabの膜挿入の反応速度論的解析やRabカスケードに対する解析を行う。
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